2008年1月10日(木)「しんぶん赤旗」
主張
新テロ特措法案
戦争支援法は審議未了・廃案に
自衛隊をインド洋に再派兵し、「報復戦争」を続ける米艦船などに給油支援を再開させる、新テロ対策特別措置法案の強行をめぐって、国会は重大な局面を迎えています。
自民・公明両党は、参議院がどのような結論を出そうが、衆議院で数の力で再可決して法案の成立をしゃにむに強行するつもりです。それは昨年の参議院選挙で、自公政治に“ノー”の審判をつきつけた国民の意思をふみつけにするもので許されることではありません。「報復戦争」を支援するための法案は、審議未了・廃案にすべきです。
民意をふみつけにする
国民のテロ新法にたいする態度は大きく変化しています。昨年十二月二十一日付「朝日」の世論調査によれば、自衛隊のインド洋への再派兵を支持すると答えた人は37%、これに対し反対と答えた人は48%です。衆議院での再可決については、支持する人が37%、支持しないと答えた人は43%にのぼっています。政府と自民・公明両党はこの国民世論にしたがうべきです。再可決などという暴挙はやるべきではありません。
テロ新法は、日本共産党の市田忠義書記局長が記者会見でものべたように、会期内に徹底的な審議を行い、採決をしないで審議未了・廃案にする以外に、国民の願いにこたえる道はありません。
法案が衆院で可決されても参院で審議未了・廃案になった例はこれまでもたくさんあります。それを実現すべきです。
アメリカの「報復戦争」はテロを根絶するどころか、テロを世界に拡散し、アフガニスタンでは多くの国民を犠牲にしています。治安の悪化は、アフガニスタンの政権と議会が進めている「平和と和解のプロセス」をも妨げています。「報復戦争」を支援するテロ新法は、平和のとりくみを妨害するだけです。
政府は、給油をうける軍艦がインド洋でテロ勢力の移動を規制する海上阻止行動に従事していれば、アフガニスタン領土への爆撃を実施する米軍にも、イラクへの爆撃を行う米軍にも給油できるとのべています(町村信孝官房長官 昨年十月三十一日衆院テロ特別委)。米軍は海上阻止行動だけでなく、アフガニスタンやイラクで「テロ」を口実にした戦争を続けています。日本政府の見解では、それこそ無限定の米軍支援、戦争支援につながることは明白です。
日本は、戦争のさなかにあっても民間人を殺してはならないというハーグ陸戦法規をはじめ国際人道法を結んでいます。にもかかわらず、アフガニスタンやイラクで多数の民間人を無差別殺りくする米軍を支援するのは言語道断です。
アフガニスタン政権が治安維持のために米軍などの活動を認めているのだから、米軍の攻撃は国連憲章が禁止した武力行使にあたらないという見解も見過ごしにはできません。アメリカの武力攻撃を正当化するばかりか、武力行使と一体化した軍事支援は憲法違反という政府の見解さえも空文にする危険があります。
米大統領への約束優先
政軍財をまきこんだ軍事利権問題はいよいよ底知れぬ状態です。その解明も十分にしないで新テロ法案を進める資格は政府にありません。
福田康夫首相がブッシュ米大統領にたいする約束を果たすため法案を強行するのは、国民よりもアメリカを優先する本末転倒の態度です。
テロ新法を廃案にすることが、国民にとっても、アフガニスタンの平和にとっても必要不可欠です。