2008年1月10日(木)「しんぶん赤旗」
派兵恒久法
機動的派兵体制狙う
「二大政党」の合作で
インド洋上へ海上自衛隊を再派兵する新テロ特措法案をめぐって国会が緊迫する中、政府・与党は、自衛隊の海外派兵をいつでも可能にする派兵恒久法制定を本格的に検討する方針を固めました。新テロ特措法案成立を前提にした派兵体制強化の動きです。
恒久法の本格検討は「今の特措法では迅速性に欠ける」(町村信孝官房長官、八日の記者会見)と位置づけるように、一年の時限立法である新テロ特措法案を仮に強行しても、参院で野党が多数を占める政治状況のもとでは、一年後の期限切れで、延長論議が再び難航するという“懸念”が政府・与党にあるためです。
米国の戦略に対応
根本には、米国の先制攻撃戦略に対応して、いつでも機動的に海外派兵する体制を整備する狙いがあります。
福田康夫首相は、もともと恒久法制定の積極論者です。小泉内閣で官房長官を務めた二〇〇二年には、自身の私的諮問機関によって恒久法の制定を提唱しました。
また、安倍晋三前首相の政権投げ出しで、明文改憲路線のスケジュールが頓挫する中で、立法によって憲法九条の制約を突破するという狙いもあります。
さらに恒久法制定へ政府の積極姿勢を後押ししているのが、民主党による恒久法整備の呼びかけです。
民主党は政府の新テロ特措法案への対案となる「アフガニスタン復興支援法案」の二五条に、“恒久法の早期整備”を明記しました。これは小沢一郎代表の強い意向を受けて盛り込まれたもので、もともと小沢氏と福田首相による「大連立」協議の最大のテーマでした。
踏み込んだ民主案
民主案は、政府案の給油継続に「反対」しながら、陸上自衛隊のアフガン本土派遣、国連決議がある場合の海上阻止活動参加の検討、自衛隊員による武器使用基準の緩和を盛り込んだもので、政府案よりもいっそう踏み込んだ内容です。
「国連決議のもとでの海外派兵」という枠組みが政府・与党との溝だという見方もありますが、各国に軍の派遣を義務づけたり、軍事活動の権限を授権する決議でなくとも、「根拠」となる決議があればいいという非常に緩やかな立場です。さらに小沢氏は、憲法九条のもとで、正規国連軍だけでなく多国籍軍への参加も可能としています。
米国からも「政府はこのチャンスを無視してはいけない。意味ある前進で憲法にも抵触しない」(コーエン元国防長官)と評価する声が出されています。
両党内での意見集約は不十分な面がありますが、小沢・福田の「あうんの呼吸」を軸としつつ、「二大政党」間での派兵競い合いの流れの中で、恒久法実現への道筋を開こうというのです。
しかし、国権の発動としての戦争はもとより、武力の行使・威嚇も禁じた憲法九条のもとで、海外派兵の恒久法を持つことは最悪の憲法破壊策動です。