2008年1月12日(土)「しんぶん赤旗」
主張
テロ新法強行
世界の流れに逆らう戦争支援
参議院が否決した新テロ対策特別措置法案を、自公両党が衆議院で再可決したことにつよく抗議します。
アメリカのアフガニスタンに対する「報復戦争」を支援するためのテロ新法は、アフガニスタンの和平努力をも妨げる、憲法違反の悪法です。本来、審議未了にして廃案にすべきものです。国民の多くはテロ新法に反対です。国民の意思にそった参議院の歴史的否決を、数の暴力でくつがえすなど言語道断です。
国際社会の大きな変化
日本の戦争支援が国際社会の和平に向けたとりくみの流れに逆らうものであることはあきらかです。
七年にわたるアメリカの「報復戦争」は、テロをなくすどころか、世界にテロを広げ、アフガニスタンの治安を悪化させているだけです。米軍とNATO(北大西洋条約機構)中心のISAF(国際治安支援部隊)が一体となった攻撃で国民の犠牲は増える一方です。人道復興もままなりません。戦争を続ければ事態はますます悪化します。憲法で戦争を放棄した日本が戦争継続に手を貸すなど許されるべきではありません。
テロ新法は、インド洋に自衛隊を再派兵して米艦船などへの給油支援を再開するとともに、米軍の海上作戦にたいする無制限の戦争支援に道を開いています。政府は、インド洋での海上阻止活動に従事してさえいれば、自衛隊が給油する相手の艦船はアフガニスタンだけでなくイラクなどでも軍事作戦できるという見解を公然とうちだしています。アメリカに追随し、アメリカの戦争に参加・協力する道を突き進むのでは、日本は平和を願う諸国に相手にされるはずはありません。
福田康夫首相は、国際社会のためだといって、テロ新法の成立を強行しました。しかしこれは、「報復戦争」参加国のなかでも戦争の手法を見直す動きがつよまっているいま、通用するものではありません。
当のアフガニスタンではカルザイ政権はテロのネットワークに加わらないタリバンとの交渉にふみだし、和平のプロセスを進めています。アフガニスタン議会の上院は、そのために、米軍に軍事掃討作戦の中止を求めています。当事国の意思を無視して戦争を続けるのは横暴のきわみです。米軍への批判は当然です。
派兵国の変化も重要です。アメリカの盟友で「報復戦争」主要参加国であるイギリスのブラウン首相は昨年十二月、反政府勢力の壊滅をめざした軍事一本やりの方針から、対話を通じて和解を促進させる戦略に重心を移すとのべています。オーストラリアの新政権のフィッツギボン国防相も「大幅な方向転換」を明言しました。アメリカ国内でも批判の声が高まっています。
国際社会は戦争の手法を見直しつつあります。日本も軍事一本やりのやり方を見直すべきです。アメリカいいなりに、自衛隊をインド洋に再派兵し給油支援を再開するのは、世界の和平の流れに逆行する愚行です。こんなことを続けていては、日本は世界で孤立するだけです。
平和的役割を根幹に
イラク戦争を契機として、紛争やテロを軍事力でなく、平和的・外交的に解決する動きがいよいよ大きくなっています。「平和的手段」による紛争の解決を求めている国連憲章に沿う流れです。これを広げつよめることが国連加盟国の責務です。
憲法で戦争を放棄した日本が、平和的・外交的解決をめざす流れの先頭に立ってこそ、世界の平和に貢献できます。