2008年1月12日(土)「しんぶん赤旗」
新テロ法 再議決強行
極まった米いいなり
世論を無視、現実も見ず
「この法案を提出したころに比べて、随分(国民の)理解が進んでいる」
「今、間違いなくアフガニスタンは改善の方向に向かっている」
福田康夫首相は参院外交防衛委員会で新テロ特措法案が否決された十日、日本共産党の井上哲士議員の追及にたいし、こう言い放ちました。
逆転した世論
法案提出当初、賛成が反対を上回っていた世論調査が、昨年末に完全に逆転したことは周知の事実です。にもかかわらず「理解が進んでいる」とは、米国のためなら、国民世論を無視してもかまわないという福田首相の立場が如実に現れています。
同時に、事実をあべこべに描くしかないところに、政府・与党がいかに窮地に追い込まれているかが示されています。
一方、アフガンの現実はどうか。
アフガン国民は、一九七九年に開始された旧ソ連による侵略以来、約二十年にわたり戦争と内戦の惨禍の犠牲となり、数百万人が難民となりました。現在は、米軍による、時には無差別の攻撃に日々さらされています。
この米軍の攻撃がいかにアフガン国民を苦しめ、治安を悪化させ、さらにはテロの温床を広げているかは、米CBSテレビが昨年十月末に伝えた次のような住民の声に象徴されています。
「私たちはこれまで、米軍よりもはるかにソ連軍を憎んできた。しかし、米軍がおこなっていることすべてを目撃したいまいえるのは、ソ連軍の振る舞いは米軍よりずっとましだったということだ」
米増派に呼応
米軍と武装勢力の双方の攻撃がエスカレートし、このままでは情勢のさらなる悪化が必至だからこそ、当初、米国の「かいらい」といわれたアフガンのカルザイ大統領も、現在は空爆の中止を求め、テロリストではないタリバンとの「平和と和解のプロセス」を探求しているのです。
新テロ特措法案の中身は、米軍の報復戦争支援そのものです。政府・与党による同法案の衆院再議決は、アフガン政府や国民の努力に冷水をあびせる以外の何物でもありません。米軍はいま、四月から海兵隊三千人を増派して、さらに戦争体制を強化することを検討しており、自衛隊の再派兵はその動きにも呼応しているといえます。
日本共産党の追及にたいし、福田首相は「米国追随じゃない」(十日)などといいますが、首相が就任早々に訪米し、ブッシュ大統領に、新テロ特措法成立に向け全力をあげると約束したのは紛れもない事実です。自衛隊の撤退をうけ、米国だけが唯一、日本を非難したことを見ても、日本政府がどこを向いているかは明らかです。
本当に米国追随でないならば、自衛隊の再派兵反対の世論に真摯(しんし)に応えるとともに、アフガンをめぐる現実をありのままに見つめ、そしてあらゆる想像力を発揮して対処するはずです。
それをしないで、憲法九条をふみにじる戦争支援法を強行したことは、首相のキャッチフレーズである「国民の目線」が、実は「アメリカの目線」にほかならないことを示すだけです。(小泉大介)