2008年1月15日(火)「しんぶん赤旗」
政令・県都50市の妊婦健診負担
「5回以上」10市だけ
国通知に財源の裏付けなし
本紙調査
十七政令指定都市と、それ以外の三十三県庁所在地のうち、妊婦健診の公費負担を国が原則としている「五回程度」以上実施しているのは、政令市で二つ、県庁所在地で八つにとどまることが、本紙の調査で分かりました。
「五回程度」以上の自治体は、福島市の十五回を最高に、秋田市(七回)、松江市(同)など。一方で三十二市が二回以下でした。五回未満の市では、ほとんどが「拡充を検討中」としており、二〇〇八年度に拡充する自治体は増えそうですが、「試算してみたが難しい」とする自治体もありました。財政力の違いから、自治体ごとのばらつきが広がる可能性もあります。
妊婦健診の費用は、医療機関によって違いますが、一回あたり四千―六千円ほど。検査項目によっては一万円を超えるときもあります。国の基準では、出産予定日までに十三―十四回程度、健診を受けることが望ましいとされており、保険もきかないなか、出産を控える人に大きな負担となっています。
市民の要求や運動を背景に、助成回数を増やす自治体も生まれました。
厚労省は昨年一月、公費負担は「十四回程度行われることが望ましい」「(財政上困難なときは)五回程度の公費負担を実施することが原則」との通知を出しました。しかし、国の通知には財政の実質的な裏づけがないため、多くの自治体が、財源確保を含め、模索しています。
〇七年度中に回数を増やしたのは、札幌(一回→五回)、福島(十三回→十五回)、宇都宮(二回→五回)、新潟(二回→五回)、金沢(二回→五回)、甲府(二回→五回)、岐阜(二回→三回)、松江(二回→七回)、松山(二回→五回)、北九州(二回→三回)の十市です。
解説
妊婦健診の公的負担拡充
自治体任せ改めよ
晩産化やさまざまなストレスの増加などにより、ハイリスク(危険因子の多い)妊婦が増えていると指摘されています。また、「貧困と格差」が広がり、経済的困難を抱える妊婦も増えています。母子の命と健康を守るうえでも、経済的負担を軽減して出産・子育てを支援するうえでも、妊婦健診の公費負担の拡充には大きな意味があります。
そのためには財政的な裏づけが不可欠ですが、国は通知を出しただけで、あとは自治体任せの態度をとっています。通知では「平成十九年度地方財政措置(注・交付税のこと)で、妊婦健康診査も含めた少子化対策について、総額において拡充」したと述べていますが、自治体からは「交付税の総額が減っているなかで“内訳では少子化対策分を増やした”といわれても…」など、不満の声が漏れています。
各自治体の努力が求められるのはもちろんですが、「少子化対策」をうたう国にも、財政面で抜本的な対策をとる責任があります。(坂井希)
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