2008年1月15日(火)「しんぶん赤旗」

九条破壊の恒久法に道

与党 民主案 継続審議の思惑


 新テロ特措法を再議決で成立させた与党が、民主党の「対案」を廃案にせず、「継続審議の対象にすべきではないか」(自民党の伊吹文明幹事長、十一日の記者会見)と次期通常国会に持ち越そうとしています。その思惑は――。

 民主党の「対案」は十一日の参院本会議で、同党などの賛成多数で可決され、衆院に送付。十五日の臨時国会会期末で対応が決まります。参院で「対案」に反対した与党が継続審議を求めるのは「極めて異例」(国会関係者)な事態です。

 与党がそこまで動くのは、民主党の「対案」が自衛隊の海外派兵をいつでも可能にする派兵恒久法の早期整備を柱に盛り込んでいるからです。民主党の「対案」を継続審議にすることで、民主党との恒久法づくりの協議に道を開く狙いがあります。

「証文としてとっておく」

 再議決で成立させた政府の新テロ特措法は一年の時限立法。参院で野党が多数を占める政治状況のもとで、与党は一年後の期限切れで延長論議が再び“難航”することを懸念しているのです。〇九年七月末にはイラク特措法も期限切れとなります。

 予想される衆院の解散・総選挙で再び与党勢力が再議決を行使できる三分の二以上の議席を確保することが難しいなかで、「民主党と恒久法の協議をする際の証文としてとっておく」(自民党関係者)というのです。

 福田康夫首相は十一日、「何かあったときに、その時々で法律をつくると時間がかかり、機敏に対応できない。それを解消するには一般法があったらいい」と改めて表明。政府はすでに八日、派兵恒久法の本格検討に着手する方針を明らかにしています。その根本には、米国の先制攻撃戦略に対応して、いつでも機動的に海外派兵する体制を整備する狙いがあります。

集団的自衛権行使を可能に

 重大なのは民主「対案」に盛り込まれた恒久法の内容です。

 恒久法の整備に関連して、民主党の「対案」は国連憲章第七章の軍事行動を含む強制措置とともに、「憲法上の自衛権に関する基本原則」を盛り込むよう求めています。

 すでに同党は、〇六年十二月の「政権政策の基本方針」で、国連決議の下での武力行使への参加とともに、「これまでの個別的・集団的といった概念上の議論の経緯に拘泥せず」として海外派兵での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使を一部容認する「基本原則」をすでにまとめています。

 国連を“錦の御旗”として海外での武力行使を公然と認め、集団的自衛権に基づく派兵まで可能にするものです。

 また「対案」は「アフガン復興支援」として陸上自衛隊のアフガン本土派兵、自衛隊による武器使用基準の緩和を盛り込み、さらに国連決議があればインド洋での海上阻止活動について参加を検討するとしました。

 福田首相は民主党の小沢一郎代表との党首討論(九日)で、「対案」について「大変意欲的だと思う」「これから国会でおおいに議論させていただきたい」と述べていました。

 派兵恒久法は、単なるインド洋やイラクへの派兵の延長ではなく、憲法九条を根底から破壊する「立法改憲」法です。その火種を残す、民主「対案」の継続審議は許されません。(中祖寅一)



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