2008年1月16日(水)「しんぶん赤旗」

新テロ法民主対案 継続審議

派兵常態化を狙う


解説

 「(アフガン)本土に陸上部隊を派遣し、武器使用基準を見直すというのだから、もっと審議・検討する価値がある」

 自民党の新テロ特措法案作成のプロジェクトチームの中心メンバーで防衛庁長官経験者は、民主党の「対案」を継続審議にした「理由」についてこう述べます。

 民主党の「対案」は、「アフガン復興支援」を名目に陸上自衛隊のアフガン本土派兵を盛り込み、自衛隊員による武器使用基準を大きく緩和しました。また国連決議がある場合には、米国のアフガン報復戦争と一体である海上阻止活動への参加を検討するとしました。

 民主党は与党案に“反対”する姿勢を強調してきましたが、その「対案」は、インド洋での給油継続に限定した与党案よりも大きく踏み込んだ内容です。高村正彦外相も「自民党がそういうものを先に出した場合、民主党が本当に賛成してくれたかわからないものを民主党が出してくれたことは有意義」(十一日)と述べるほどです。

法整備義務付け

 参院では民主「対案」に反対した与党が、衆院で「継続審議」とした最大の狙いは、自衛隊海外派兵の恒久法の実現に向けて“火種”を残すところにあります。

 民主「対案」は、「国際的なテロリズムの防止及び根絶」を口実に「我が国の安全保障の原則に関する基本的な法制が速やかに行われるもの」としています。「アフガン復興支援」とは関係なく、自衛隊の海外派兵を恒久化する法制=本格的海外派兵法制の早期整備を義務付けるものです。

 恒久法整備を「柱」に「対案」取りまとめを指示したのは小沢一郎代表です。そしてそれは小沢代表と福田康夫首相との「大連立」協議の最大のテーマの一つでした。

 政府は年明け八日、新テロ特措法案強行の構えを固めつつ、恒久法の本格検討に着手する方針を明らかにしました。

 その根本には、アメリカの先制攻撃戦略に対応して、いつでも機動的に海外派兵する体制を整備する狙いがあります。〇五年十月の在日米軍再編に関する中間報告は「国際的な安全保障環境改善」を口実に、米国と日本が海外の共同作戦態勢で「実効的な態勢を確立するための必要な措置をとる」ことを合意しました。

 民主「対案」に示される恒久法の内容は、これにこたえる中身です。

2つの基本原則

 「対案」は二つの「基本原則」を盛り込むとしています。一つは憲法の下での自衛権の発動にかかわるもの。もう一つが国連憲章にかかわるものです。これらの「基本原則」についての考え方を、民主党はすでに〇六年十二月の「政権政策の基本方針」でまとめています。そこでは国連決議があれば経済制裁や軍事制裁を定めた憲章四一条、四二条にもとづく行動に参加するとしています。さらに「個別的・集団的といったこれまでの概念上の議論の経緯に拘泥せず」自衛権を行使するとして、集団的自衛権の行使を一部容認しました。

 憲法九条のもとで、国連のお墨付きがあれば海外での武力行使を可能とし、それがなくても米国と一体の武力行使ができるということです。

 政府は新テロ特措法の一年後の期限切れをにらんでそのときまでに恒久法を整備しておこうと急いでいます。海外派兵体制を常態化する恒久法は、憲法九条と根本的に相いれません。(中祖寅一)


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