2008年1月17日(木)「しんぶん赤旗」

日雇い派遣の権利保護

移動時間の賃金支払い

不正天引き禁止

厚労省が指針示す


 厚生労働省は十六日、違法派遣など社会問題となっている日雇い派遣で働く労働者の権利保護などを盛り込んだ指針を、同日の労働政策審議会の部会に示しました。次期国会で労働者派遣法の抜本改正を見送る代わりに検討していたものです。


 グッドウィルなど事業停止命令を受けた派遣元と派遣先企業が行っていた二重派遣など違法行為を防ぐために、派遣元と派遣先に労働者から聞き取りをしたり、実際の就業場所を巡回して契約通りかどうかを確認したりすることを求めています。派遣労働者の連絡や苦情処理などにあたる派遣先責任者についても、選任することを義務付けます。

 派遣元が「データ装備費」などの名目で給与から不正に天引きする企業が多いことから、使途が明白で労使協定を結んだ場合以外は「不適正な控除が行われないようにする」として禁止。集合場所から就労現場までの移動など拘束時間の賃金を支払わない問題についても、「労働時間を適正に把握し、賃金を支払うこと」を求めています。

 賃金や労働時間など労働条件について、明示した書面を交付することを指示。ただし、携帯電話を活用した就業条件の明示も認めています。

 また、日雇い派遣労働者が派遣元を適切に選択できるように、派遣の実績や派遣料金などを公開することを派遣元に求めています。労働者側が求めていたマージン(派遣元が取る手数料)の公開は見送られました。

 一方、安定雇用のため契約期間の長期化については、「可能な限り長く定める」と努力義務にとどめ、派遣元に課せられている職業能力の向上などについても「実施するよう努める」などとしています。

 日雇い派遣を規制する「指針」の策定は、違法行為が相次ぐ労働者派遣の規制強化を求める世論と運動を無視できなくなったものです。不法行為をなくし、労働者の権利を守るには、日雇い派遣の禁止を含む労働者派遣法の抜本改正にすすむことが求められています。


解説

「日雇い派遣」厚労省指針

派遣法の抜本改正を

 厚生労働省が十六日、違法派遣やワーキングプアなど社会問題となっている「日雇い派遣」を規制する新たな指針をまとめました。

 日雇い派遣は、グッドウィルの二重派遣や給与からの不正な天引きなど違法行為が横行し、禁止を含む派遣法の抜本改正を求める声が高まっていました。今回の指針は、世論や運動に押されたものといえますが、指針の策定によって派遣法の改正を見送ることは許されません。

 指針は、「データ装備費」など横行している給与からの不正な天引きについて禁止を明記。集合場所から就労現場まで拘束時間の賃金を支払わない問題についても賃金の支払いを命じています。

 これらは現行法でも認められない違法行為であり、遅きに失したとはいえ当然の規定です。

 指針はまた、グッドウィルなどで摘発された二重派遣を防ぐために、派遣元と派遣先に、労働者からの聞き取りや就業場所の巡回などを求めています。しかし、違法派遣は、派遣元と派遣先が共謀しているのが実態で実効性が疑われています。

 一方で、安定雇用のための契約期間の長期化については、「可能な限り長く定める」と努力義務にとどめ、ピンはねをチェックするためのマージン率(派遣元の手数料)の公開も見送られました。労働者の願いにこたえるには不十分です。

 日雇い派遣は、仕事のあるときだけ働く「登録型派遣」のなかでも極端に不安定な雇用で不法行為が横行しています。

 派遣法では、派遣元に教育訓練などさまざまな義務を課していますが、日雇い派遣は教育訓練も行われておらず、職業安定法が禁じる労務供給事業にあたるのが実態で、禁止すべきものです。

 ほんらい雇用は、直接・常用雇用が原則になっています。これに対して労働者派遣は、働かせている企業が雇用の責任を負わない間接雇用です。だからこそ政府も国会で「派遣は臨時的・一時的なものであり、常用雇用の代替にしてはならない」と言明してきました。

 ところが、財界の要求に従って、一九九九年には原則自由化し、二〇〇四年には製造業への派遣も解禁され、ほとんどの業務で派遣労働ができるようになっています。労働者派遣法の原則に立ち返ってこの規制緩和の流れに歯止めをかけるために、抜本改正を行うことこそ求められています。(深山直人)



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