2008年1月17日(木)「しんぶん赤旗」

最低賃金の考え方、制度はいつごろ始まったの?


 〈問い〉 最低賃金の考え方、制度はいつごろ、どこの国から始まったのですか? 日本では、いつ制度ができたのですか?(神奈川・一読者)

 〈答え〉 世界最初の最低賃金制は、1894年に、ニュージーランドで導入されました。その目的は、労働争議の防止と調停にありました。争議が発生している地域・産業で、仲裁裁判所が最低賃金に関する仲裁裁定をくだし、争議の調停をおこなっていました。

 2年後の1896年には、隣国のオーストラリアのビクトリア州で最低賃金制が導入されました。その目的は、ニュージーランドとは異なり、低賃金労働の一掃におかれていました。このオーストラリアの経験を研究したイギリスが最低賃金制を導入したのが1909年。これがヨーロッパで最初の最低賃金制になります。その後、フランスやノルウェー、オーストリア、チェコスロバキア、ドイツ、スペインなどのヨーロッパ諸国に広がりました。ただし、この時期の最低賃金制の適用範囲は、家内労働者や一定の職業などに限定されていました。

 最低賃金制が、アジアやラテンアメリカ、アフリカを含め全世界に広がるのは、1929年の大恐慌を経験して以降、とりわけ第二次大戦後です。適用される労働者の範囲も拡大されていきました。

 日本が最低賃金制を導入したのは1959年で、国際的に大きく立ち遅れました。当時、日本企業は、労働者を低賃金で働かせてつくった安い商品を各国に輸出していました。このことが「社会ダンピング(不公正競争)」にあたるとして国際社会から非難されたため、最低賃金制の導入に踏み切りました。

 しかし、当時の最低賃金制は、業者間で最低賃金を定める方式で、労働者はその決定にいっさい参加できませんでした。国際労働機関(ILO)「最低賃金決定制度の創設に関する条約」(第26号)に反するもので、労働組合は「ニセ最賃」と批判しました。現在の、審議会方式による最低賃金制に改善されたのは、やっと1968年になってからです。

 日本の労働組合は、早くから、最低賃金制の確立をかかげ積極的にたたかってきました。1920年の第1回メーデーでは、「失業防止」とならんで「最低賃金制の制定」を主要スローガンにかかげました。第2次大戦後も、世界であたり前になっている全国一律最低賃金制の確立を前面にかかげ、最低賃金制の改善をかちとってきました。日本共産党は、民主主義革命の旗をかかげた「綱領草案」(1923年)のなかで「最低賃金制の実施」を要求し、その実現のために一貫してたたかっています。(筒)

〔2008・1・17(木)〕


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