2008年1月18日(金)「しんぶん赤旗」
雇い兵犯罪 米政府が放置
人権団体批判
司法省は「免責」やめよ
【ワシントン=鎌塚由美】米国の人権団体「ヒューマン・ライツ・ファースト」は十六日、ワシントンで会見し、イラク、アフガニスタン戦争で米政府が契約する民間軍事会社の雇い兵の犯罪を追及しないブッシュ政権には「法執行の意思の欠如」があると厳しく批判しました。そのうえで、既存の法体系を適用し、犯罪免責の悪弊を終了させるよう訴えました。
雇い兵へのインタビューや政府資料をまとめた同報告は、現在のイラク戦争の雇い兵の数を「少なくとも三万五千人」と推定。占領米軍主導の連合軍の中で第二の「武装治安部隊」となっていると指摘しました。
弁護士らで構成する同団体は雇い兵問題について、これらの企業だけでなく、米司法省の責任にも目を向ける必要性を強調しました。報告は、米司法省が法的枠組みの不備を理由に雇い兵問題で「免責」という悪弊を続けていると指摘。これは地元住民を怒らせるだけでなく、「雇い兵による更なる侵害を助長している」とも述べました。
報告はイラクやアフガニスタンでの雇い兵による事件について、「ほとんどは、既存の米国刑法のなかに全面的捜査と起訴を行う実質的な基礎がある」と指摘。法の執行強化とともに、殺傷事件の被害者には「雇い兵会社による補償が義務付けられるべきだ」とも提言しました。
イラクでは昨年九月、米大使館員などを警護する米民間軍事会社ブラックウォーターの雇い兵が市民に発砲し、少なくとも十七人が死亡。国際的にも雇い兵問題が大きく注目されました。報告は、同事件に対する米政権の対応は「混乱、保身、その場しのぎの調査の繰り返しと、政府機関同士の責任のなすり付け合い」だったとし、「これらの失敗は、深刻な暴力事件に対し、体系的な捜査と起訴を行う司法省の意思のなさを強調している」と述べました。
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