2008年1月24日(木)「しんぶん赤旗」
JR採用差別を認定
全動労訴訟 国鉄は中立義務違反
東京地裁
国鉄分割・民営化のさい全動労(全国鉄動力車労組=現・建設交運一般労組鉄道本部)と国労の組合員ら千四十七人がJRに不採用・解雇された事件で、東京地裁は二十三日、組合差別があったことを認め、国側に損害賠償を命じました。国の組合差別を認定した判決は、国労組合員らが勝訴した二〇〇五年の東京地裁判決に続いて二度目。国は全面解決を迫られることになります。
この訴訟は、北海道の全動労組合員と遺族五十八人が、国鉄清算事業団を引き継いだ鉄道建設・運輸施設整備支援機構に慰謝料などを求めていたもの。北海道では、民営化賛成の労組はほぼ100%採用されたのに、全動労はわずか28%。全動労を脱退した組合員は全員採用されました。
裁判で機構側は「民営化に反対した者はJRにふさわしくない」と差別は当然と居直りました。
佐村浩之裁判長は、民営化反対が「不利益に作用しているとみるのが相当」として採用差別を認定。組合に対して「中立保持義務」を負う国鉄が差別を行ったことは、「公平な取り扱いを受けるべき法的利益を違法に侵害する不法行為に当たる」として、一人あたり五百五十万円の損害賠償の支払いを命じました。
損害賠償請求権が時効(三年)だという機構側の主張も、不採用の責任主体が国鉄にあるとの判断が最高裁で確定した〇三年十二月が起算点だとして退けました。
記者会見で原告・弁護団、建交労、全労連の代表は「国の不当労働行為を認める流れが明確になった。政治解決を求めていく」とのべました。
機関士の佐藤勝麿さん(62)は「民営化は労働者と国民のためにならないとたたかってきた。二十年の思いが認められうれしい。政府に解決を求めたい」と表明。亡くなった夫の渡部修二さんの遺志を継いだ妻の理子さん(60)は「夫は間違ってなかったと胸を張って子どもたちにいえる。やっと納骨してあげられる」と涙ながらに語りました。
JR採用差別事件 一九八七年の国鉄分割・民営化のさい、国労と全動労の組合員らがJRに採用されず、旧国鉄清算事業団も解雇された事件。中央労働委員会は九三年不当労働行為と認定し、JR採用を命じましたが、最高裁は〇三年、JRに法的責任なしとして取り消し。そのため労働者は国の責任を問う訴訟を起こし政治解決を求めています。ILO(国際労働機関)も解決を求める勧告を七度出しています。
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