2008年1月24日(木)「しんぶん赤旗」

JR差別 全動労訴訟判決

全面解決 政府の責任

断罪された国家的不当労働行為


解説

 東京地裁が二十三日、全動労組合員のJR採用差別事件で、国鉄が組合差別を行ったことを認め、損害賠償を命じる判決を出しました。

 判決は採用差別を「不法行為」とし事実上、国の不当労働行為を認めました。国の不当労働行為を認めたのは、国労組合員らが勝訴した二〇〇五年の東京地裁判決に続いて二度目。国が不当労働行為を行った事実と法的責任は争う余地がないものになりました。国は全面解決のため、直ちに交渉のテーブルに着くことが求められます。

 国鉄の分割・民営化は当時の中曽根首相が「臨調行革の二〇三高地」と呼び、国民サービス切り捨ての「臨調」行革路線の最大の柱と位置付けられたものです。国民サービスを守ろうと反対する労働組合つぶしをねらって引き起こしたのが、採用差別事件でした。

 しかも政府は、「所属組合によって選別することがあってはならない」(当時の橋本龍太郎運輸相)「一人も路頭に迷わせない」(中曽根首相)との約束も投げ捨て、許されない国家的な不当労働行為を行ったのです。

 採用差別を否定できない国側は裁判で、「民営化に反対するものはJRにふさわしくない」とのべ、民営化を御旗に差別は当然だと開き直りました。しかし、使用者が労働者を差別しても当然だなどという論理が通用するわけがありません。判決は、国のこの姿勢を「中立義務に違反する」として断罪しました。

 しかも、民営化が正しかったなどといえないことは、ローカル線の切り捨てや国民負担とされた巨額の借金をはじめ、最近の福知山線の脱線事故を見ても明らかです。

 すでに事件から二十年が過ぎ、解決を見ずに亡くなった労働者も多く、家族も含めて苦痛は極限に達しており、人道的立場からも一刻も早い全面解決が求められます。

 全国七百五十一の地方議会が早期解決を求める意見書を可決し、ILO(国際労働機関)も七度にわたって解決を求める勧告を出しています。

 労働者側は、不採用となった労働者と組合、支援団体が組織の違いをこえて団結し、政府の責任による全面解決を求めています。福田康夫首相が「国民の立場にたって」というなら、判決と世論を受け止め、関係者との協議を直ちに開始することこそ求められます。(深山直人)


「お父さん勝ったよ」

報告集会

 JR不採用事件の全動労訴訟で、東京地裁が国鉄清算事業団を引き継いだ鉄道運輸機構に対して不当労働行為を認め、損害賠償を命じた判決の報告集会が二十三日、東京・文京区で開かれ、全動労争議団や国労闘争団を含む二百五十人が参加しました。

 建交労の佐藤陵一委員長は、「いよいよ鉄道運輸機構の責任は明確だ。団結して何としても解決の道筋をつけよう」とあいさつ。全労連国鉄闘争本部の岩田幸雄本部長は、「要求でも裁判でも当事者、労組などが足並みをそろえてたたかってきた。政府を解決の交渉テーブルにつかせよう」とのべました。

 連帯あいさつした国労の高橋伸二委員長は、「この判決を大きな足がかりにして一気かせいに政治解決に向けてみなさんとともに頑張りたい」とのべました。

 訴訟弁護団の加藤健次弁護士が判決内容を報告。「分割民営化に反対したから不採用でもしかたない」などとする機構側の主張を退け、採用差別を不当労働行為と認定した点は明快であり、「機構の責任はもう争う余地がない」とのべました。

 二〇〇六年二月に亡くなった渡部修二・元争議団事務局次長の妻の理子さんが「お父さん、頑張ったかいがあって不当差別が認定されたよと報告したい。一日も早く解決したい」と発言。全動労争議団の梅木則秋団長代行が、「私たちはダメ職員だから採用されなかったなどという不名誉を今日の判決でぬぐうことができた。解決に向けて国労の仲間とともに頑張りたい」と決意を語りました。



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