2008年1月24日(木)「しんぶん赤旗」
温室効果ガスの排出枠 政府間の直接購入とは?
〈問い〉 日本政府がハンガリーから温室効果ガスの排出枠を買い取ると聞きました。政府間の直接購入は初めてと聞きましたが、どういうことでしょうか?
(東京・一読者)
〈答え〉 先日、日本政府はハンガリー政府との間で、温室効果ガスの排出枠を購入する覚書を交わしました。日本が政府間で直接、排出枠を取得するのは初めてです。これは、「京都議定書」で定めた削減目標達成が困難な時に、削減量として他国から獲得できる「京都メカニズム」の一つの形態です。
日本は、京都議定書の第一約束期間(2008年〜12年)に基準年(1990年)総排出量比6%削減を国際公約しており、「京都議定書目標達成計画」(以下、「目達計画」と表記)では、基準年比1・6%分に相当する約1億トンCO2を「京都メカニズム」で活用する予定にしています。政府は06年度から新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)に委託して、途上国や先進国での共同削減による排出枠の取得事業を実施しています。
「京都メカニズム」については、国内対策で最大限努力して不足する分について、「あくまでも補完的に」活用することが国際的なルールです。排出枠の取得に際しては、地球規模での温暖化防止、途上国の持続可能な開発への支援を図る観点を踏まえることが重要であるとされています。
しかし、ハンガリーから購入するのは、生産活動の低迷などで排出量が自然と減り「余剰」となる見込みのものであり、実際の温室効果ガス削減につながるものではありません。今回、政府がこうした「余剰排出枠」の購入に手をつけた背景には、より安く排出枠を獲得したいという思惑があります。
日本は、排出量を基準年比6・4%も増加させ(06年度速報値)、財務省の試算では、排出増加の穴埋めとして排出枠購入が膨らみ取得費用は1兆2千億円にもなるおそれを示しています。そして「このような財政負担は納税者の理解を得られない。国内対策で確実に削減目標を達成する必要がある」としています。
昨年末、追加削減対策をまとめた「目達計画」見直し最終報告案が発表されましたが、産業界の「自主行動計画」や「国民運動」が大きな柱になっており削減効果は不確実です。このままでは、増えた分は排出枠の取得で穴埋めするという方向が果てしなく膨らむ危険性があります。大幅な削減をすすめるためには、排出量の8割を占める企業・公共部門での取り組みがカギです。
「目達計画」見直しをする今こそ、産業界と政府の間で削減協定を結び、達成責任を公的なものとして実効ある排出削減対策に踏み出すべきです。
(安)
〔2008・1・24(木)〕