2008年1月25日(金)「しんぶん赤旗」
生活保護
老齢加算廃止で困窮
民医連調査 5割が食費切り詰め
全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)が二十四日発表した生活保護受給者の老齢加算廃止後の「生活実態調査」によると、二割を超える世帯で一日の食事回数が二回以下と答えています。「切り詰めた費用がある」と答えた世帯は六割を超え、廃止後一年間に四割の世帯が服や履物を全く買わなかったと答えるなど、生存を脅かす事態を招いていることが浮き彫りになりました。
調査は老齢加算廃止一年後の咋年六月から八月にかけて実施。対象は全国の七十歳以上の老齢加算が支給されていた単身、夫婦の生活保護受給世帯で回答した三百八十八世帯。調査員が直接、面接し聞き取りました。
老齢加算廃止によって切り詰めた費用があると答えた世帯は全体(単身+夫婦世帯)の63・7%を占め、支出が減った世帯は43・6%にのぼりました。
切り詰めた費用は回答の多い順に「食費」(52・3%)、「被服履物費」「光熱、水道費」「交際費」(グラフ)など。食事の内容は「満足していないし、十分な栄養になっていない」と34・3%の世帯が回答。「交際費」の切り詰めの結果、冠婚葬祭の通知があったときの対応は「全く参加しない」と「あまり参加しない」を合わせると七割に及びます。
全日本民医連のソーシャルワーカー委員会の本庄美也子さんは「老齢加算の廃止で、生活保護制度が憲法二五条の健康で文化的な最低限度の生活の保障とはかけ離れていることを示した。老齢加算の復活、生活保護基準全体の引き上げが本当に必要だ」と話しました。
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生活保護 老齢加算廃止で暮らしは
1日食事2回以下も
“町内づきあい断った”
民医連調査から
全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)が二十四日、発表した生活保護老齢加算廃止による実態調査報告は、老齢加算廃止が高齢者を非人間的生活に追いやっている実態をなまなましく告発しています。憲法二五条にもとづく「健康で文化的な最低限度の生活」を政府が保障するには、生活保護基準の引き上げが急務になっていることを明らかにしています。
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生活保護を利用している七十歳以上の高齢者は、老齢加算として月一万七千九百三十円(都市部)を上乗せして支給されていました。これは、高齢者のかむ力の衰えや社会的付き合いの広がりなど肉体的、社会的条件からくる特別需要を補うことを目的にしていました。
ところが厚労省は、七十歳以上と六十九―六十歳までの消費支出を比較した場合、特別の需要があるとは認められないとして二〇〇六年度から全廃しました。現行の生活保護基準のみで最低限度の生活はできるとしたのです。
衣食住切り詰め
しかし、調査から見えてきた実態は――。「住む、食べる、着る」という生命維持に必要なことまで奪っていました。
切り詰めを迫られた最大のものは食費でした。その割合は52・3%に及んでいました。一カ月の食費は単身世帯で三万円未満が52・1%を占め、二万円未満が23・3%となっていました。
一日の食事が二回以下が単身世帯で23・6%、夫婦世帯で24・1%ありました。その内容は「食事は昼食兼用で昼の残りを夕に食べる」「月末になると一日一食にする。うどんやそうめんで過ごす」。全体の34・3%が「十分な食事とはいえない」と答えていました。
次に切り詰めたものは衣服履物費でした。衣服や履物を一年間まったく買わなかったのが単身世帯で40・0%、夫婦世帯で36・1%に及んでいます。
生存の基盤である住居について調査しています。生活保護は、その住居を保障するために住宅扶助(地域で差があり、仙台市三万七千円、大阪市四万二千円など)を支給しています。
調査では大半(61・1%)は民間のアパート・借家に住み、単身世帯の24・5%は住居に風呂がありませんでした。「屋根の雨漏りがひどい」「老朽化が進み土台が朽ちている」状況が見られました。
また生活に必要な家具や家事用品についても調査。修繕の必要があると答えたのが単身世帯で32・1%、夫婦世帯で36・1%にのぼっていました。「ガス台が古くなり、いつ爆発するか心配。玄関のカギが壊れていて不安」と回答。
水道光熱費についても「灯油が高いので、なるべくストーブをたかない」「夜は電気をつけず、テレビの明かりでがまんしている」と切り詰めていました。
教養娯楽費ゼロ
「人間らしく生きる」ためには、生存するだけでなく、社会の一員として生活でき、移動でき、恥をかくことなく人前にでられることなどが欠かせません。老齢加算廃止はこの「人間らしく生きる」ことのいっさいを奪おうとしています。
単身・夫婦世帯をあわせ71・1%が地域の行事、51・3%が冠婚葬祭にまったく参加しないと答えていました。単身世帯では、一カ月の交通費ゼロが42・6%を占め、電話代ゼロが12・1%となっていました。夫婦世帯でも一カ月の教養娯楽費ゼロが59・0%をしめています。
「町内会を脱退し、つきあいを断った」「老齢加算があったら、親せきなどに香典を包みたい」…。高齢者が社会とのかかわりを断ち、ひっそりと息を殺すようにして生活している様子がうかがえます。
基準引き上げを
老齢加算があったら何に使うか―。
「食費などの生活費に使う」「栄養のある食事がしたい」「ショートステイを利用し、デイケアをふやしたい」「もう何年も着る物を買ってないので、洋服代として使いたい」「亡くなった妻の法事のお金にしたい」
この言葉の一つひとつが老齢加算廃止のもたらした実態を告発しています。
「人間らしく生きる」ことは人々がもつ基本的権利です。政府は憲法二五条二項の規定にもとづき、この権利を保障する義務をおっています。調査報告はこう締めくくっています。「そもそも低すぎる生活保護基準の引き上げが必要だ。老齢加算の意義を再確認した上で、高齢者に配慮ある加算を再度設けることが必要だ」