2008年1月25日(金)「しんぶん赤旗」
主張
海外派兵恒久法
自動参戦を促進する違憲立法
通常国会の論戦のなかで、海外派兵恒久法をつくる動きが浮上しています。
福田康夫首相は日本共産党の志位和夫委員長の質問に対して、恒久法の検討は「望ましく有意義」だとのべました。恒久法制定をもりこんだ新テロ特措法に対する民主党の「対案」が継続審査となっていることをうけて、民主党に「野党とも十分議論させてもらいたい」と協力をよびかけたことも見過ごせません。
危険な競い合い
恒久法は戦争を放棄した憲法をふみつけにする希代の悪法です。日本の海外派兵の拡大は、平和のために努力している諸国の信頼も失います。恒久法をつくる動きを封じ込めていくことが必要です。
恒久法は、海外派兵ごとに特別措置法をつくり、国会の審議を経て自衛隊を出動させるこれまでのやり方をやめ、ひとたび制定すればその後は自動的に、政府の判断で、いつでもどこにでも海外派兵できるようにするものです。アメリカがひきおこす戦争への加担のために、自衛隊を「迅速」に参戦させるバネになるのは必至です。
自民党は二〇〇六年八月に、恒久法である「国際平和協力法」(小委員会案)を作成しています。国会にはまだ提出されてはいませんが、福田首相の議論がこれを土台にしているのはいうまでもありません。
自民党案は、国連の決議がなくても「国連加盟国その他の国の要請」さえあれば派兵できるとしています。たとえ要請するのがアメリカ一国でも、アメリカが国連を無視して始めるイラク侵略のような戦争に、加担できるようにするというわけです。
憲法で禁じられた武力行使を事実上容認するしくみも用意されています。「安全確保活動」はイラクでの米軍をみても武力行使が伴います。それを受け入れ国の同意があれば可能だというのです。政府は新テロ特措法案の審議で、アフガニスタン政権が治安維持のために米軍の活動を認めている以上、空爆であろうと国連憲章が禁止する武力行使にあたらないとのべました。恒久法はこの新見解を固定化し、拡大するものです。
自民党案は、武器使用を、「警護」や平和協力活動への「抵抗の抑止」にも広げています。憲法が禁止する集団的自衛権の行使にもつながりかねない内容になっています。
民主党は新テロ対策特措法案にたいする「対案」のなかで、派兵恒久化法の整備を求めました。「対案」が国連安保理決議を理由に、戦闘が続いているアフガニスタン領土に自衛隊を送り込むことを正当化していることをみても、恒久法の内容が憲法に沿うものとなるとは思えません。
自民党と民主党の海外派兵拡大の競い合いはどちらも憲法九条違反の競い合いです。ともに許すわけにはいきません。
戦争国家にさせない
日本共産党の志位委員長は代表質問で、「だれのための恒久法か」と批判し、世界の流れに反することをうきぼりにしました。海外派兵恒久法は、アーミテージ元米国務副長官が恒久法論議に「励まされる」とのべたように、アメリカの要求によるものであるのはあきらかです。アメリカいいなりをやめ、恒久法の検討をやめるべきです。
いま国際社会では、紛争がおきても外交的・平和的に解決しようという流れが大勢となっています。この流れに逆らって、戦争を助長する恒久法をめざすのでは、日本は世界の孤児になるだけです。