2008年1月25日(金)「しんぶん赤旗」

インド洋 再派兵

テロ根絶にも世論にも逆行

海自給油再開 実態は米の戦争支援


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(写真)横須賀基地を出港する護衛艦「むらさめ」(手前から2隻目)=24日、神奈川県横須賀市

 政府・与党が成立を強行した新テロ特措法にもとづき、海上自衛隊の護衛艦が二十四日、出航しました。二十五日には、補給艦が出航し、部隊としてインド洋に向かいます。国民世論の力で、いったんは中止させた軍事支援を再開させるもので、海自再派兵反対の根強い世論を踏みにじるものです。

憲法踏みにじる

 昨年七月の参院選での与党惨敗と新たな国会情勢のもとで、昨年十一月に旧テロ特措法は失効し、海自部隊は撤退していました。

 こうしたなか政府内では当初、新テロ特措法の成立による派兵再開をあきらめる声さえあがっていました。ところが福田内閣は、国会の会期を二度にわたって延長させた異例の越年国会で、成立を強行しました。

 それでも、派兵反対の世論は根強く、マスメディアの世論調査でも、賛否は拮抗(きっこう)しています。

 このため政府・防衛省が強調し始めているのが、給油した油がイラク作戦に転用される「懸念の払拭(ふっしょく)」(石破茂防衛相、十八日)と、海自の活動がインド洋の安全を確保し、「国民の生活基盤の安定に寄与する」(同)という宣伝です。出航行事で町村信孝官房長官は「(海自派兵は)国益にも合致する」とも述べました。

 しかし政府も、海自がアフガニスタン空爆を任務とする米艦に給油することも可能だとしており、再開されるのは、まさに米主導の対テロ報復戦争に対する、憲法を踏みにじった支援そのものです。新テロ特措法成立後、ただちに部隊の派兵を急いだのも、四月までに展開される米海兵隊の増派にあわせたものともいえます。

避けられぬ転用

 転用問題でいえば、先の臨時国会で日本共産党の赤嶺政賢衆院議員の追及に町村官房長官は、給油相手がテロリストの拡散を海上で防止する海上阻止活動の任務にあたってさえいれば、「それ以外の目的を同時にやっていたとしても問題ない」と答弁しています。

 インド洋で米軍は、イラク作戦、アフガン作戦、海上阻止活動を一体として展開しているのが実態です。政府がどんなに「懸念の払拭」といったところで、転用防止など不可能なのです。

即刻中止し撤退を

 “海自の活動が国民生活を安全にする”というのも、事態を逆さまに描くものです。

 いまアフガンで米軍などが展開している掃討作戦は、罪のない市民を殺害し、報復の連鎖と深刻な治安悪化をもたらしています。十四日には、首都カブールにある高級ホテルまで、自爆攻撃される事態です。

 軍事的打開が行き詰まるなかで、アフガンのカルザイ政権も、空爆の中止を要求。タリバンを含む武装勢力との対話による和平を目指すプロセスに踏み出しています。米国の同盟国も、米国の増派要求に応じようとしていません。

 まさに、「テロ根絶」にも世界の流れにも逆行しているのが今回の海自派兵です。「国益」どころか、国際社会の平和と安全を脅かしかねないものです。

 真剣に「テロ根絶」「国民の安全」を願うのであれば、今からでも海自派兵を即刻中止し、撤退させるべきです。そして、アフガンで進んでいる和解プロセスを後押しする外交努力と、その障害になっている掃討作戦の中止を米国に求めることこそ必要です。(田中一郎)


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