2008年2月4日(月)「しんぶん赤旗」
来年度文化庁予算案
文化活動の振興に逆行
二〇〇八年度予算案のうち文化庁予算案の詳細が明らかになりました。福田内閣になって初めての予算案は、「構造改革」路線にしがみつき、芸術・文化活動を支えるどころか、切り捨てる姿勢が鮮明になっています。
助成は「統合・一元化」で減額
文化庁予算案は、千十七億五千五百万円で、前年度比一億円(0・1%)増を計上しています。しかし、芸術活動への支援、文化財保存、国立美術館などの基盤整備の三つの柱に分けてみると、増額となったのは文化財保存だけで、他は大幅減となっています。
芸術・文化活動では、芸術団体の事業への助成を「より合理的・効率的な助成事業に組みかえて実施」するとして、「芸術創造活動重点支援」から「戦略支援」に組み替え、文化庁委託事業から日本芸術文化振興会(芸文振)への補助事業に変更しています。助成額は四億八百万円(8%=前年度比、以下同じ)減で、芸文振の運営費交付金も四億五千九百万円(4%)減となっています。
政府は昨年末、「行革」の一環として、独立行政法人の「整理合理化計画」を決め、芸文振については、文化庁の助成事業との「統合・一元化」をもとめ、あわせて助成額を抑えることを決めました。今回の予算案は、こうした流れに沿ったものといえます。
日本映画支援は、総額でも一億七千二百万円(8%)減で、製作、上映、人材養成のすべての項目で後退しています。政府は、「コンテンツ」振興を宣伝しますが、予算案を見れば、結局“市場任せ”で、諸外国で当たり前の国立映画大学や映画撮影所への支援などに踏み出そうとはしていません。
国立美術館などの「文化芸術拠点の充実」は、全体でも二億五千四百万円(1%)減となっていますが、とくに国立美術館や文化財機構の運営費交付金は五億二千二百万円(4%)減です。政府は、独立行政法人「整理合理化計画」で、国立美術館・博物館に「市場化テスト」の導入などを決めましたが、一方で「合理化」をもとめ、他方で予算を削る最悪の切り捨て路線です。
予算案の中で、子どもの文化芸術体験活動は増額となりました。「貧困と格差」の拡大や授業時間増で、芸術鑑賞教室が急減していることは政府自身が認めており、子どもたちが芸術に接する機会を保障することは当然です。ただし、「本物の舞台芸術鑑賞事業」などの現在の方式には、選定や実施内容に多くの意見が出されており、改善・充実させることが必要です。
また、文化財関係については、「文化財の保存修理等」などを中心に増額が認められました。
助成充実のため幅ひろい議論を
現在、舞台芸術、映画など、国民の鑑賞機会は増えるどころか減少しています。そのとき、芸術団体への助成を削減することが芸術・文化の振興に逆行することは明らかです。
今回の予算案と「整理合理化計画」とで決められた助成事業の変更は、一九九〇年の芸術文化振興基金、九六年のいわゆる「アーツプラン」以来の枠組み変更となります。「アーツプラン」は一昨年、三年継続の団体支援から個別事業ごとの支援に変えられましたが、実施後二年で全体の枠組みを見直さざるをえなくなっています。文化庁は今回の変更を既定事実としていますが、助成充実のための広い議論が必要です。(辻 慎一、党学術・文化委員会事務局次長)