2008年2月6日(水)「しんぶん赤旗」

基本的人権の考え いつごろ生まれたの?


 〈問い〉 憲法97条の「基本的人権」の規定には「壮大な歴史観が盛り込まれている」という言葉に出合いました。基本的人権の考えはいつごろに生まれ、発展してきたのですか?(長野・一読者)

 〈答え〉 日本国憲法第97条は「基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利」だと述べています。

 思想・信教・言論の自由、法の下の平等、参政権、人身の自由などに表現される基本的人権は、最初から今日のように体系的なものでなく、各国人民の国王や封建領主の専制とのたたかい(日本もふくむ)のなかで発展、確立してきたものです。

 イギリスで、マグナ・カルタ(1215年)から「権利章典」(1689年)にいたるいくつかの文書が「人権宣言」の前史をなすといわれています。そのうえに、人は生まれながら自由、平等であり、生来の権利を保持しているとする天賦人権説がうたわれ、基本的人権の考え方が基本的にできあがるのは、18世紀の後半にいたってからです。それは、独立したアメリカ諸州の憲法(1776〜89年)やフランス革命の「人および市民の権利宣言」(1789年)に明確に表現されています。

 しかし、機械制大工業が発展するもとで、労働者階級の貧困、労働苦、長時間労働、失業が広がり、労働者や農民など人民の真の自由、平等は実現されませんでした。市民的政治的権利と同時に、人間が生きていくための生存権や団結権、教育権など、経済的社会的権利を要求するたたかいが発展していきました。

 日本でも、天皇絶対の専制政治によって国民の生活と権利がきびしく抑圧されるもとで、言論・思想の自由、8時間労働制など、自由と人権を求める不屈のたたかいが展開されました。

 このように人類の長期にわたるたたかいをつうじて、20世紀に基本的人権の内容が豊かにされ、確立する流れが大きく広がっていきます。ロシア革命(1917年)は、経済的社会的権利を保障する画期となりました。

 日本国憲法が基本的人権を「人類の自由獲得の努力」と表現しているのは、こうしたまさに多年にわたる内外の人びとのたたかいを人類の社会進歩のなかに力強く位置づけたものだということができます。

 今日、政府や大企業などの人権抑圧に対し、選挙・政治活動の自由、生存権を守る運動など、いまなお自由獲得の努力がたゆまなく続けられていることは、憲法の基本的人権の保障を本当に実のあるものにするために重要です。(法)

 〔2008・2・6(水)〕


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