2008年2月7日(木)「しんぶん赤旗」

政治解決の必要強調

イラク・アフガン問題 英戦略研が軍事年鑑


 【ロンドン=岡崎衆史】英国際戦略研究所(IISS)は五日、二〇〇八年版の軍事年鑑『ミリタリー・バランス』を発表しました。米国が対テロ戦争の名の下で大規模な軍隊を投入するイラクとアフガニスタンで不安定な治安状況が続いていることを指摘し、状況改善に向けた政治的な取り組みの遅れに警鐘を鳴らしています。アフガニスタンについては、反政府武装勢力の戦術が向上しているとしています。

 年鑑はイラクの治安が「極めて不安定だ」と分析。昨年来の米軍増派によってテロ攻撃などは著しく減ったとしながらも、犯罪や民兵同士の争い、宗派対立が「いまだに頻繁に起こり、政治、経済上の取り組みを妨害している」としました。

 アフガン情勢については、「〇七年は前年までと比べて極めて多くの自爆攻撃が行われた」として、「武装勢力が地理的に影響力を拡大しているだけでなく、戦術上の教訓や技術がイラクの武装勢力から持ち込まれていることを示している」と指摘。武装勢力の勢力拡大と戦術の巧妙化や向上が同時に起きていると警告しました。

 〇七年二月にチェイニー米副大統領がカブール北方のバグラム米空軍基地を訪問した際に、同基地付近で爆発が起きたことを例に、「武装勢力はかなりの行動の自由を有し、攻撃対象やその時期と行動についての正確な情報を持つことを示した」としました。

 また、「アフガン問題が軍事的に解決されると考えている者はいない」と述べ、政治解決の必要性を強調しました。

 年鑑は、アフガン、イラクに大部隊を派遣している米国の国内で、軍の対応能力を疑問視する声が出ていることを紹介。「他の緊急の安全保障上の必要部分への投資を妨げ、陸軍と海兵隊を限界に追い込んでいるとの懸念が軍高官からでている」と述べ、ケーシー米陸軍参謀総長が昨年、「現在のわが軍への需要は、持続可能な供給を上回っている。われわれは、即応能力を生み出してはすぐに消費している」と発言したことを紹介しました。



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