2008年2月8日(金)「しんぶん赤旗」
高血圧患者ら健診除外
75歳以上医療 厚労省が指示
健康より費用減
四月実施予定の後期高齢者医療制度の発足にともなう健康診査制度の変更に関連し、厚生労働省は七日までに、血圧を下げる薬などを使用している七十五歳以上を健診の対象から除外するよう、都道府県に指示しました。七十五歳以上の高齢者で現在健診を受けている約二百八十七万人に深刻な影響を与えるものです。
現在、老人保健法に基づく基本健康診査は、四十歳以上を対象に実施しています。しかし、二〇〇六年に強行された医療改悪法により、四月から七十五歳以上は「後期高齢者の健康診査」に切り離されます。四十歳―七十四歳を対象にした「特定健康診査」は「実施義務」とされましたが、七十五歳以上は、実施しなくてもいい「努力義務」に格下げされました。
さらに厚労省は、六日開催した都道府県の担当者会議で、七十五歳以上の健診対象者を「絞り込む」必要があると説明しました。具体的には、健診を申し込む七十五歳以上の人に、(1)血圧を下げる薬(2)インスリン注射または血糖を下げる薬(3)コレステロールを下げる薬―のどれかを使用しているかを質問。一つでも該当すれば、「すでに治療中で生活習慣病の必要な検査をしている」とみなし、「実施の必要が薄く、対象者から除いてもらう」と指示しました。
厚労省の担当者は「精査をおろそかにすると、受けなくてもいい人まで受けてしまう。費用がかさみ、保険料の上昇につながる」「厳しい予算の範囲内で効果的効率的な執行を」と強調しました。
解説
病気見逃す危険
七十四歳までは高血圧の薬を飲んでいても健診できるのに、七十五歳になったとたんに「健診の必要なし」とされる合理的な理由はありません。薬の服用だけで、「治療している」と機械的に判断することは、他の疾病を見落とす危険があり、早期発見・予防に逆行します。
後期高齢者医療制度の導入を決めた医療改悪法は、「国民の老後における健康の保持」を明記していた老人保健法を廃止し、「医療費の適正化」を中心にすえた「高齢者医療確保法」を新設しました。健診からの高齢者の排除は、「健康よりも、医療費抑制が大事」という政策転換が、最悪の形で示されたものです。高齢者の健康に直結する健診の改悪は中止すべきです。(宮沢毅)
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