2008年2月13日(水)「しんぶん赤旗」
「負担軽減」口実にした基地強化路線転換せよ
少女暴行 問われる米軍再編
「日米同盟の根幹にかかわる」(石破茂防衛相)「沖縄の皆さんの心を逆なでする事件で許しがたい」(渡辺喜美金融担当相)
沖縄の米海兵隊員による少女暴行事件で十二日、閣僚による遺憾の意が相次ぎました。在日米軍再編の中核である米海兵隊キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市)への新基地建設に、「影響がないということはありえない」(高村正彦外相)からです。
一九九五年九月、米兵三人による少女暴行事件が発生して、長年の米兵犯罪に苦しむ沖縄県民の怒りが爆発。米兵を特権的に保護した日米地位協定の抜本改正と米軍基地の整理・縮小を求めて九万人の県民大会が開かれるまでに抗議の声が広がりました。
しかし、日米両政府は、地位協定の抜本改正には背を向け、「運用改善」でお茶を濁したうえ、新たな基地強化にのりだしました。「基地負担の軽減」を口実としたSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)最終報告(一九九六年)では、米海兵隊普天間基地(宜野湾市)に代わる新基地をシュワブ沖合に建設することで合意。当初の計画は失敗に終わりましたが、現在も「在日米軍再編」を口実に新たな名護新基地計画を狙っています。
この新基地計画にも圧倒的多数の県民は反対しています。基地ある限り、米軍による事件・事故はなくならないことを、みずからの経験で知っているからです。
今回の事件の直近に限っても、普天間基地所属の米兵によるタクシー強盗(今年一月)、米兵の息子による女性暴行(昨年十月)など凶悪犯罪が続いています。
二〇〇六年一月に神奈川県横須賀市で発生した米兵による女性殺人事件の後、在日米軍司令部は「日米同盟の重大な試練」(ライト司令官)との認識を示し、「綱紀粛正」策をアピールしました。しかし、彼らが進める方策が何の実効性も持たないことが、今回あらためて証明されました。
それにもかかわらず、政府の対応は米側への「綱紀粛正・再発防止」の要請にとどまっています。
「負担軽減」を口実にした基地の強化・たらい回し路線を転換し、米軍基地の本格的な縮小・撤去に踏み出さない限り、植民地のような現実をなくすことはできません。
ところが町村信孝官房長官は十二日、十日の岩国市長選を受けて「米軍再編が着実に進む環境が整い、歓迎している」と述べるなど、米軍基地強化につながる「在日米軍再編」を推進しようとしています。国民の生命と安全より米軍を優先させる姿勢では、米軍犯罪をなくすことはできません。(竹下岳)
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