2008年2月17日(日)「しんぶん赤旗」

教科書シンポ

検定改革の好機

「沖縄戦」で問題明白


 日本史教科書の沖縄戦「集団自決」の記述から「軍の強制」が削除された問題を通して教科書検定制度の問題点を考えようというシンポジウムが十六日、東京都内で開かれ約六十人が参加しました。子どもと教科書全国ネット21などの呼びかけで五年前から行われてきた「教科書を考えるシンポジウム」の第十四回として開かれたもの。

 歴史教育者協議会の石山久男委員長は「沖縄戦検定」で明らかになった問題点として右翼勢力の策動や教科書調査官主導の制度について報告。訂正申請に対して文科省が「指針」を設定して出版社に訂正記述を書き直させたことは「学問的にも検証されていない特定の歴史のとらえ方を強制する重大な問題。このやり方でほかの教科の教科書も画一化される恐れがある」と語りました。一方で沖縄戦をめぐる検定をつうじて検定システムの問題点が広く明らかになったことは「検定制度の抜本的改革から廃止への動きを盛り上げるチャンスだ」と訴えました。

 科学教育研究協議会の小佐野正樹さんは理科の教科書がもっとも検定意見の数が多いことを紹介。メダカの受精の写真をのせた教科書に「受精に至る過程は取り扱わない」とした学習指導要領に反すると意見がつき、オスとメスが別々に泳いでいる写真に差し替えられた例など、多くの実例を示し、しゃくし定規で恣意(しい)的な検定が行われていると告発しました。学会や多くの自然科学者が批判の声を上げていることも示して、「制度改善に向けて議論を広げていく必要がある」と語りました。

 教科書ネットの俵義文事務局長は一九八〇年代まであった「条件付き合格」という制度がなくなり、検定意見を受けてからの修正期間も短縮されたこと、検定意見の通知もわずか二時間に制限され、そのうち調査官に質問できる時間は一時間しかないことなどを紹介。出版社側が文科省の指示通りに修正せざるをえなくなっている現行制度の問題点を指摘しました。

 討論の中で理科教科書の編集者は、一冊に二百件もの検定意見がつき、二時間の通知時間では一件当たり四十秒足らずの時間しかないという実態を語りました。



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