2008年2月20日(水)「しんぶん赤旗」
若手研究者の就職難と待遇の解決へシンポ
貧しい科学技術政策転換の必要うきぼり
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「ふだんは自分自身のことで精いっぱいで、若手研究者全体がどのような状況に置かれているか、あまり見えてなかったので、私がこの問題を多面的に考える機会を与えてくれました」
二日に開催された日本共産党学術・文化委員会主催の「若手研究者の就職難と劣悪な待遇の解決のための公開シンポジウム」に参加したポストドクター(任期一年―五年の非正規雇用研究員)から届いたメールです。
声をあげよう
パネリスト五氏の報告(三、四日付で既報)それぞれが、大学院博士課程を修了後に半数が就職できないなど「高学歴難民」と呼ばれる今日の若手研究者の現状、日本の学術研究と社会の今後にかかわる重大問題として解決へ向けての課題は何か、を掘り下げたものでした。これを受けた自由討論は大学、研究機関、労組、団体から次つぎ手があがりました。
若手を受け入れる側の共同利用研究機関の関係者は、五年の間にポストドクターが急増しているが、大学は大学院生のその後の行き先を調べる必要があるのではといい、全国大学院生協議会からは、学費が払えない大学院生の割合が昨年比で倍増し、収入不足が研究に影響を与えていると報告。パネリストからも「支援のないポストドクター」など雇用実態の把握がさらに必要だと意見が出されていました。
若手研究者自身から解決へ向けた連帯が必要だとの認識がしめされたことも特徴でした。
パネリストの榎木英介・サイエンス・コミュニケーション代表理事が「当事者が声をあげていかなければならない」、この問題を広く社会の人々に支持されながら解決するために「一人ひとりバラバラではだめなので、ネットワークをつくろう」と呼びかけたことに、生命系学会の若手研究者から発言がありました。「若手が声をあげづらい状況はあるが、それでも声をあげる必要がある。全国大学院生協議会のように、ポストドクターの中にも若手の声をくみあげて声をあげる組織をつくっていけたら」と。
「研究救え」と
問題提起もありました。博士課程修了者が多すぎるから減らせという意見もあるが、高等教育のレベルを上げることはいいこと、そういう人を活用しないことの方が問題だと思うと坂東昌子・愛知大学教授はいいます。
問題の根本的な解決のために、大学の運営費交付金削減の押しつけなど、貧困な科学技術政策を変える必要があるということも浮き彫りになりました。「政府が科学・技術にお金を出せば解決する」と岡田安正・元産総研主任研究員はいい、「文部科学行政全体の根本的転換が必要」と吉田裕・一橋大学教授も語りました。
石井郁子衆院議員は情報提供だとして、二〇〇二年に研究予算を大幅に削減したフランスで、研究者が立ち上がり「研究を救え」運動が起き、ポスト削減を撤回させたこと、その後も研究のための長期計画法が成立していることなど世界の動きを紹介しました。
参加した社会科学系の大学院生の女性(25)は「学術全体のビジョンをつくるための国民的な議論が必要だと思う」と話していました。
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