2008年2月26日(火)「しんぶん赤旗」

主張

衝突事故1週間

真相究明に集中審議は不可欠


 海上自衛隊の最新鋭イージス艦「あたご」が、マグロはえ縄漁船「清徳丸」に衝突、沈没させた事故から、二十六日で一週間を迎えます。行方不明になった二人の乗組員の捜索は難航し、なぜ衝突したのか、原因の究明もすすんでいません。一日でも、一時間でも早い救援とともに、原因の徹底究明が求められます。

 「清徳丸」とともに漁場に向かっていた僚船の証言や伝えられる海上保安庁の捜査で、イージス艦が注意義務、衝突回避義務を怠ったことは明白です。真相究明のためには、海上保安庁の捜査とともに、予算委員会での集中審議など、最優先の課題としての国会での追及が不可欠です。

捜査中は理由にならない

 ことは国民の税金で建造され、国民を守ることをうたい文句にした自衛艦が、民間の漁船に衝突して沈没させ、二人の乗組員が行方不明になって一週間を迎えるという事態です。防衛省・自衛隊が、何はさしおいても捜索と救援にあたり、経過と原因を国民に説明するのは当然です。

 これまで防衛省・自衛隊が明らかにしたのは、事故当日発表した「あたご」の見張り員は衝突二分前に漁船らしい船の緑灯を見て一分前に後進をかけたなどという断片的な情報だけです。それもすぐあとには十二分前には漁船らしい船の赤灯を見ていたと訂正する二転三転ぶりです。

 石破茂防衛相は「海上保安庁が捜査中で、捜査に支障を与えるような発表はできない」としきりに言い訳していますが、衝突事故を起こした当事者として、国民に明らかにしなければならないことは山ほどあります。事故直前の見張りの体制はどうなっていたのか、混雑する東京湾に近づきながら直前まで自動操舵(そうだ)にしていたのはなぜなのか、「あたご」の艦長は事故当時何をしていたのかなど、防衛省・自衛隊は国民に説明すべきです。

 だいたい、防衛省・自衛隊は「海保が捜査中」などといいながら、いの一番に、衝突二分前には緑灯を見ていたなどと発表しました。緑灯は船の右舷にあり、海上衝突予防法では左舷の赤灯を見た船に回避義務があります。防衛省・自衛隊はその後しぶしぶ、十二分前には赤灯を見ていたと訂正しましたが、これでは「捜査中」というのはまったくの口実で、自分に都合のよいことは説明するが、都合の悪いことは説明しないだけのことになります。

 衝突された漁船の所属した漁協の関係者からも、全国の国民からも、防衛省・自衛隊は「情報隠し、情報操作をやめよ」というきびしい声が上がっています。先週末までに防衛省に寄せられた抗議の電話は千本を超すといわれます。衝突事故で国民の生命・財産に損害を与えた上、事実をゆがめて責任を逃れようなどというのは断じて容認されません。

絶えず国民の監視下に

 今回の事件では、「あたご」から海上保安庁への連絡が遅れただけでなく、自衛隊から石破防衛相や福田康夫首相への報告も遅かったことが問題になりました。巨大な武装組織である自衛隊にその力を誤って行使させないため、もっとも大切なのは、その行動が絶えず国民の監視下に置かれることです。国民の前と国会で説明すべき政府の責任は重大です。

 野党は衆院予算委での集中審議を要求しています。審議中の来年度予算案にはイージス艦を使ったミサイル防衛のための予算も計上されています。事故の真相究明に全力を挙げることを前提に、そんな予算が必要なのかもぜひ議論すべきです。



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