2008年3月3日(月)「しんぶん赤旗」
主張
「日の丸・君が代」
「強制おかしい」が国民の合意
卒業式や入学式で「君が代」を歌わせるためなら手段を選ばない―そんな異常な行政に「待った」をかける司法の判断が続いています。
卒業式めぐりつづく判決
石原東京都政は「君が代」斉唱・「日の丸」掲揚を「教育正常化」のカナメと位置づけ、都教委通達をだして学校の権限を無視した画一的な卒業式や入学式の執行を命じ、従わない教職員を片っ端から処分しました。生徒には「君たちが大きな口を開けて歌わないと大好きな先生が処分されるんだよ」と陰湿な圧力が加えられます。生徒の心を土足で踏みにじる、教育にあるまじきおこないです。
これにたいして東京地裁は二〇〇六年九月、都教委の「10・23通達」を違憲・違法と認定し、教職員らに通達に従う義務がないことを確認する判決をくだしました。
今年二月七日には、定年を迎えた教員のうち不起立だった人だけ再任用を拒否したことを、「客観的合理性や社会的相当性を著しく欠く」不法行為だと認定し、東京都に二千七百六十万円の賠償を命じました。
通達を是認した点で不十分ですが、教育熱心で生徒からも「来年も教えて」と慕われていた教員を、「君が代」の踏み絵だけで排除した都の非道さを告発したものです。
卒業式ではありませんが、障害のある子どもに必要な性教育を保護者の支持のもとでおこなったことへの見せしめとして、都立七生(ななお)養護学校の元校長を処分したことも二月二十五日、違法として都に処分取り消しを命じました。
神奈川県では、県教委が県立高校などで「君が代」斉唱時に起立しなかった教職員の氏名を校長に報告させる制度が問題となりました。県の個人情報保護審査会は昨年十月、条例で禁じられている「思想・信条に関する個人情報の収集」にあたるとして、氏名情報の保管や利用を中止する答申をだしました。
こうした判断の土台には憲法があります。
「日の丸」「君が代」は侵略戦争のシンボルでした。そのことに思いをはせて拒否の感情をもつ人々の気持ちは、憲法に照らして守られるべき「思想・良心の自由」です。この点は、政府も国会でたびたび「その通り」と答弁してきたことです。
いま一つの土台は、「なにがなんでも歌わせろ」という行政の命令が、校長の裁量権すら奪い、まじめな教育者をさいなみ、教育の営みをこわしていくことへの深い憂慮です。
「卒業式は最後の授業」そんな思いで卒業作品をつくり、手づくりの式を準備してきた生徒と教師。それが都の命令で作品は壇上から撤去され、格式ばった式になる。誰が考えても胸がつぶれる光景です。
世論も、「君が代」などへの賛否をこえて、「強制はおかしい」で一致しています。異常な行政に歯止めをかけ、広げないために力をあわせようではありませんか。
学習指導要領見直しを
強制のおおもとには、文部科学省が学習指導要領で「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と定めてきたことがあります。
その結果全国でも、東京ほどではないにしても強制がすすんでいます。二月公表された新指導要領もこの規定は同じです。
入学式や卒業式は、子どもを温かく迎え、送り出すためにこそあります。指導要領からこうした規定を削除することをつよく求めます。
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