2008年3月3日(月)「しんぶん赤旗」

道路特定財源の論戦

固執する論拠 次々崩れる

政府も「見直し」を口に


 政府・与党が二月二十九日、衆院で強行採決した二〇〇八年度予算案と歳入関連法案。ガソリン税などの暫定税率を十年延長し、五十九兆円もの税金を道路建設に注ぎ込むのが狙いの一つです。しかし、この間の国会論戦では、日本共産党などの追及で、道路特定財源に固執する政府・与党の論拠が次々崩れています。(佐藤高志)


道路中期計画積算根拠なし

 道路特定財源問題の核心である「道路中期計画」(十年で五十九兆円)。国会審議では、その積算根拠さえ極めていいかげんなことが明らかになりました。

 積算根拠をただした仁比聡平議員に対し、国土交通省は、〇七年度実績をそのまま機械的に各年度の事業量として積算しただけであることを明らかにしました(二月一日の参院予算委員会)。しかも、額賀福志郎財務相は、毎年度の査定も「個別にきちっとやっているわけではない」(二月十九日、衆院財務金融委員会)などと答弁。総額をどう使うかは、「国土交通省のさじ加減」という状況が浮き彫りになりました。

 「中期計画」の問題は、それにとどまりません。バブル時に計画された一万四千キロの高速道路建設に加え、約七千キロの大型道路や東京湾口道路など六つの横断道路まで整備の対象、候補にしていることも論戦で明らかになりました。

 日本共産党の穀田恵二衆院議員は、この問題を指摘して、「(大型道路は)全部で二万一千キロ。これを全部つくるつもりか」と追及。冬柴鉄三国交相は、「大変要望が強い」などと答弁しました。(二月十二日の衆院予算委員会)

 しかし、「中期計画」では、住民が切実に求めている通学路の整備やバリアフリー化、防災対策はあわせても一割程度。高速道路・大型道路の建設ばかりに大盤振る舞いを続ける内容です。

 これには、専門家からも「生活道路は(国の)補助の対象になりにくく、後回しにされているのが実情」(二月二十二日の衆院予算委員会公聴会、「構想日本」の加藤秀樹代表)など批判が相次いでいます。

一般財源化のごまかしも

 政府は、こうした批判に対し、「道路特定財源の余った部分は一般財源化する」と言い訳しています。しかし、この主張も、道路特定財源を固定化するだけで、一般財源化につながるものではないことがすでに明らかになっています。

 佐々木憲昭議員は「政府の主張は、三重に国民をごまかすものだ」と批判(二月二十日の衆院財務金融委員会)。(1)道路特定財源のうち、実際に一般財源にまわる税収割合は、わずか千九百億円(〇八年度予算案)で全体(三兆三千億円)のわずか6%(2)その税収も信号機の設置など道路関係費にしか充てられない(3)「一般財源」にまわした税収相当額は、翌年度の道路整備費に繰り越される―の三点をあげ、「結局、道路整備費を増やす仕組みになっている」と告発しました。額賀財務相は、「計算上はそういうようになる」と認めました。

 論戦がすすみ、道路特定財源の根幹にかかわる問題点が次々と明らかになるなかで、政府自身も「見直し」や「修正」を口にせざるを得ない事態も生まれています。

 笠井亮議員が六大横断道路建設を盛り込んだ「国土形成計画」の閣議決定をやめるよう追及すると、冬柴国交相は「検討する」と表明しました。(二月二十一日の衆院予算委員会)

 さらに笠井氏は、この建設計画の調査を請け負う団体の役員には、ゼネコンや国交省の天下りが占めていることを告発。冬柴国交相は「庶民の目で見ておかしいと思うものは、改革する」と述べ、道路特定財源の使途や決定過程の透明化・見直しのための改革本部の設置にも言及せざるをえなくなっています。

 道路特定財源に固執する政府・与党への国民の不信は、審議を通じてより深まっています。今、必要なことは参院での徹底審議を通じて道路特定財源の問題点をさらに明らかにし、一般財源化に足を踏み出すことです。



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