2008年3月6日(木)「しんぶん赤旗」
続消費税なぜなぜ問答
社会保障の財源を考える(24)
Q 必要な道路 つくれなくなる?
政府は、道路特定財源と暫定税率がなくなると、地方の道路財源がなくなり、「必要な道路がつくれなくなる」と宣伝しています。知事や市長を動員して、「道路特定財源堅持」のキャンペーンを行っています。特定財源制度をなくすと、本当に必要な道路もつくれなくなるのでしょうか。
第一に、特定財源制度を廃止したとしても、道路整備に税金が使えなくなるわけではありません。本当に必要で整備が急がれる道路であれば、一般財源である税金を使えばいいのです。他の用途と比較して、どちらがより重要で、緊急性があるかは、住民や地方自治体が判断することです。
たとえば、「中期計画(素案)」では、「市町村の中心部から複数の高次・救急医療施設への六十分での移動を概ね達成」することを、目標の一つに掲げています。しかし、道路はつくったとしても、病院がなくなってしまったり、救急医療をやめてしまったりすれば、さらに遠くまで道路を延ばさなければならなくなります。「道路に税金を使うより病院の維持に使った方がいい」と、住民が判断する場合もあるでしょう。特定財源のままでは、そういう判断は不可能です。
第二に、素案にも多数盛り込まれている無駄な道路建設をやめれば、通学路の歩道整備など、緊急に必要な道路整備の財源は十分に確保できます。特定財源や暫定税率を大前提にして計画を立てるのではなく、どの道路がより緊急なのか、きちんと見直すことが必要です。
第三に、とくに地方自治体の場合には、暫定税率がなくなって困るのは、これからつくる道路の費用よりも、過去につくった道路のための借金が返せなくなるということです。一九九〇年代半ばには、道路特定財源の二倍以上の規模で、道路建設が行われました。不足する分は、将来の特定財源をあてこんで、借金をしてつくりました。借金してつくった自治体にも責任はありますが、「つくれ、つくれ」と旗を振った政府の責任が重大です。借金返済で財政が苦しいという点については、道路財源の狭い枠の中だけで考えるのではなく、地方財政全体の中で考えるべき問題です。これまでに地方交付税を五兆円以上も減らしてきた国の責任も含めて、議論しなければなりません。
国交省の旗振りのもとで各県が試算している「影響額」の中には、住民を脅かすために過大な数字を挙げたものも少なくありません。表に挙げた県の試算の合計額は、総務省の試算の四倍にもなっています。これは実際の税収減だけでなく、「国の補助金もなくなる」とか「県債も発行できなくなる」などということまで合計しているからです。実際には、地方交付税が交付されている地方自治体についていえば、暫定税率廃止によって税収が減ったとしても、減った分は交付税で補われる仕組みがあり、暫定税率の廃止分が、すべて財源の減少になるわけではないということも、きちんとみておく必要があります。 (つづく)
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