2008年3月12日(水)「しんぶん赤旗」
救急搬送の危機
医療費抑制が命脅かす
解説
救急車が患者の搬送先を見つけられず、死亡にいたる痛ましい事態が全国で後を絶ちません。総務省消防庁が十一日に公表した調査結果は、救急医療の現場で深刻化している「医療崩壊」の実態を改めて示しています。
政府・与党の社会保障切り捨て政策のもと、医師不足が原因で、救急医療施設は五年間で約一割減りました。日本共産党の山下芳生議員が参院予算委員会(二月四日)で追及したように、入院が必要な患者を受け入れる二次救急医療から病院が次つぎと撤退した結果、本来二次救急で受け入れるべき患者が三次救急に流れ、「最後のとりで」の救命救急センターがいつも「処置中」か「満床」に近い状態になっています。医療機関には「患者を受け入れたくても、対応できる体制がなくて受け入れられない」という事情があるのです。
問題の根本には、医療費抑制のために、閣議決定までして医師の養成数を減らしてきた政府の姿勢があります。日本の医師数は人口千人あたり二・〇人で、経済協力開発機構(OECD)加盟三十カ国中二十七位。OECD平均と比べて十四万人も不足しています。
さらに、相次ぐ診療報酬の削減によって、医療機関が「経営難」に陥っている問題もあります。
政府は調査結果を受けて、消防機関と医療機関の連携の重視や、情報交換の円滑化などの対策を打ち出しました。しかし、根本的な対策に踏み出そうとはしていません。
救急医療の現場では、医師も看護師も救急隊員も、一人でも多くの命を救うために力を尽くしています。しかし、現場の努力だけで打開できる問題ではありません。安心できる医療体制を確保するため、政府は、いますぐ医療費抑制政策の誤りを認め、医療を充実させる方向に抜本的に政策を転換することこそが必要です。(秋野幸子)
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