2008年3月13日(木)「しんぶん赤旗」
ムダ道路建設の“隠れみの” 国幹審→国幹会議
審議形がい化 議事録語る
1.6兆円の計画 40分で決定
高速道路建設計画を審議する「国土開発幹線自動車道建設会議」(国幹会議)が、無駄な道路建設推進の“隠れみの”になっているのではないかと、問題になっています。こうしたなか、国幹会議の前身、国土開発幹線自動車道建設審議会(国幹審)の審議も「道路ありき」の形がい化したものだったことが、当時の議事録などでわかりました。
国幹審の審議実態を明らかにしたのは、当時、日本共産党の参院議員で審議委員だった岩佐恵美さん。
一九九八年十二月におこなわれた国幹審で、審議の対象になったのは、新たな国幹道(高速道路)十三区間、二百二十一キロ▽二車線を四車線化する整備区間が九区間、二百三十五キロ▽ジャンクション・インターチェンジの追加、六カ所▽整備計画が策定され、事業に着手する区間が二十八区間、五百八十八キロ―などを決めるものでした。
建設省(当時)の道路局長が各議案の説明をおこなったあと、会長代行の席に座った当時の関谷勝嗣建設大臣が意見、質問を委員に求めました。冒頭、岩佐委員は次のように発言しました。
(1)関係住民の意見を聞くことが大事、環境にも十分配慮すべきだ。第二東名高速道路へのアクセス道路はほとんど住宅地区と緑地であり、騒音・振動など環境悪化が懸念される。都市部にどんどん道路を造ることには賛成できない。
(2)今回二車線を四車線にするところはほとんど赤字路線だ。道路公団が赤字まみれにならないか危惧(きぐ)する。国・地方財政危機のときにこんなことをすべきではない。
このあと五人の委員が意見を表明。岩佐委員以外のすべての委員の賛成で議案が採択され、道路計画が策定されました。議案の道路建設、整備事業費は、一兆六千億円(当時)、審議時間はわずか四十分余りでした。
こうした審議の形がい化は、二〇〇一年一月に国幹審を衣替えする形で発足した国幹会議でも同様です。
昨年十二月二十五日に開かれた国幹会議では、住民の反対運動を受けて一九七〇年以降、凍結していた東京外郭環状道路(練馬区―世田谷区間、約十六キロ)を地下トンネルで建設する国交省の基本計画(一兆六千億円)をわずか一時間ほどで了承してしまいました。
採決まで省こうとした
岩佐恵美元参院議員の話 道路計画の決定のプロセスがきわめて形がい化していることは重大です。国幹審に日本共産党の国会議員が参加できたのは、七〇年代前半に日本共産党が躍進した時期と九八年の参院選で日本共産党が史上最高の二十三議席を獲得した二回です。
私は審議委員としての責任から議案資料を早く入手し、関係方面に意見を聞こうと思い、再三にわたって要求したのですが、届いたのは開催前日の午後でスタッフと関係方面の意見を聞いた記憶があります。
しかも反対理由を最初にのべたにもかかわらず、採決もせずに済まそうとしたのですが、事務局があわてて採決の手続きをとったことを鮮明に記憶しています。おそらくそれまで反対意見を述べる委員がいなかったのではないか。
自民、公明の与党は十年で五十九兆円という巨費を投じる道路整備計画を強行しようとしていますが、計画策定過程が不透明で、関係自治体や住民の意見が生かされていない以上、計画は撤回すべきです。
国土開発幹線自動車道建設会議 全国的な高速道路網を形成するため、高速幹線自動車道づくりの基本計画などを審議することを目的に置かれた国土交通相の諮問機関。現在は自民党の伊吹文明幹事長、民主党の輿石東代表代行など国会議員10人(衆院6人、参院4人)、日本経団連会長含む「学識経験者」10人で構成されています。