2008年3月13日(木)「しんぶん赤旗」

ワークライフバランス論 どう考える?


 〈問い〉 最近、「ワークライフバランス」という言葉をよく聞きます。政府や財界もいいだしているようですが?(東京・一読者)

 〈答え〉 ワークライフバランス(WLB)は、仕事と生活の調和と訳されています。WLBは、欧米で1980年代に始まった取り組みで、仕事と生活を両立させて、人間らしく生きたいという労働者の願いや要求が込められています。男女を対象にした保育や介護と仕事の両立支援策がとられている北欧諸国、育児・子育てのための生活保障施策が充実しているフランスなどヨーロッパ各国で、WLBの施策が積極的に取り組まれています。

 日本でも最近、政府や財界が盛んにWLBを口にするようになっています。政府は昨年12月、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」をまとめました。しかし、政府や財界のWLB論は、労働者の願いや要求にこたえるものではありません。

 政府や財界は、WLBは、労使が協調して生産性の向上に努めながら自主的に取り組むことが基本といっています。その意味は、トヨタの職場をみると、よくわかります。トヨタでは、労使一体のWLBの取り組みの一つとして、年休完全取得運動がすすめられ、部長が先頭に立って“強制的”に労働者に年休を取らせています。しかし、その代替要員は補充されません。そして、一人減っても仕事は回るといって、要員が削減され、いっそうの過密労働が強いられています。これが、生産性の向上に努めながらWLBをすすめるということです。

 しかも、政府の経済財政諮問会議では、WLB論をふりまくことによって、国民の批判をかわし、残業代ゼロ法案のホワイトカラーエグゼンプションを導入するための「一つのステップ」にしようという議論さえ公然とおこなわれています。

 政府のWLB論は、育児や子育て、介護と仕事の両立を望む労働者の願い・要求にこたえるポーズをとりながら、実際には、労働者にいっそうの長時間・過密労働を押し付けるものになっているのです。WLBを実現するためには、ワーキングプアの解決など雇用の安定が必要ですし、長時間・過密労働の解消、低賃金の打破が課題になっています。(藤)

 〔2008・3・13(木)〕


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