2008年3月16日(日)「しんぶん赤旗」
教科書検定改革の好機
沖縄戦記述シンポ 廃止へ運動を
沖縄戦の「集団自決」の教科書記述から文部科学省の検定で軍の強制が削除された問題を考えるシンポジウム「歴史教科書 いままでとこれから」が十五日、東京都内で開かれ研究者、教師ら約五十人が参加しました。「教科書に真実と自由を」連絡会、社会科教科書懇談会、歴史学研究会など九団体が主催しました。
日本史教科書執筆者の坂本昇さんは、自身が体験した検定について報告。軍の強制を明らかにするために出した訂正申請に対して文科省の教科書調査官がなんども書き直しを求めた経過を説明し、「調査官側の意見を書かせる検定になった」と指摘しました。
やはり教科書執筆者で歴史教育者協議会委員長の石山久男さんは、沖縄戦検定の背景に右翼勢力の政治的動きがあることを指摘。どういう手続きで選ばれたかも分からない教科書調査官が密室で検定し、恣意(しい)的に書き直させることができる制度に問題があるとのべるとともに、その問題点が広く明らかになったいまが検定制度の抜本的改革、廃止への運動を盛り上げるチャンスだと強調しました。
沖縄現代史研究者の戸邉秀明さんは、沖縄戦の性格や集団強制死(「集団自決」)についての認識を深めることが重要になっていると問題提起。沖縄の人が体験した差別の問題や、沖縄に来た日本軍の大部分は中国大陸から派遣された部隊で、中国での加害や性暴力の経験が沖縄での行動に影響しているなど「沖縄戦の複雑さ」を指摘。「右派が問題の単純化・わい小化を狙い、一九六〇年代以降の研究の蓄積を無視した議論が横行しているが、それを乗り越えることが必要」だとのべました。
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