2008年3月20日(木)「しんぶん赤旗」
イラク侵略戦争5年
人権は「壊滅的」
市民殺害・拷問・貧困
アムネスティ報告
【ワシントン=鎌塚由美】国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは十七日、米軍主導のイラク侵攻から五年たってもイラクは「大虐殺と絶望」に置かれているとする報告をまとめました。イラクの人権状況は「壊滅的」だと述べ、同国は現在「世界でもっとも危険な国の一つ」だとしています。
報告は、「イラクでは宗派間暴力がイラク市民の命を奪っているだけではない」とし、米主導の連合軍およびイラク治安部隊による「過剰な武力行使、故意の殺人や無差別攻撃によっても(市民が)殺害されている」と述べています。「民間軍事会社」の市民殺害にも言及しています。
米軍が「ここ数カ月のイラクの治安状況は安定している」と宣伝しているにもかかわらず、治安状況は改善されていないと強調。「法と秩序の確立は依然として程遠い」状況だと指摘しています。
同報告によると、米軍などに拘束されているイラク人は「十歳から八十歳までの約六万人」に上ります。これらの人々の「ほとんどは起訴や裁判なしで拘束」され、イラク治安部隊による「拷問や虐待」「最近では治安部隊メンバーによるレイプ疑惑も起きて」います。
報告はイラク市民の現状について、「三人に二人が安全な飲み水を利用できず、十人に四人が一日一ドル以下で生活している。就労人口の半分は失業中で、八百万人の人々が生存のための緊急支援を必要としている」と指摘しました。
さらに、急進的なイスラム教徒グループの台頭によって、戦争前とは違い「女性たちの多くは、暴行や仕返しの脅しからイスラム衣装の着用を余儀なくされていると感じている」と紹介。女性や少女たちは「武装グループや治安部隊によるレイプの危険にさらされている」と指摘しました。 「経済回復」についても、開戦後に約束された「早急な経済復興には依然として程遠い」状態。「民間軍事会社を含む、治安維持」に国際的な支援金が投入される一方、貧困にさらされているイラクの人々には「ほとんど回されていない」としています。
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