2008年3月21日(金)「しんぶん赤旗」
大企業の通関に特例
佐々木議員 法令順守上問題あり
日本共産党の佐々木憲昭議員は十九日の衆院財務金融委員会で、関税定率法等改定案について質問しました。佐々木氏は、同案に盛り込まれた「日本版AEO」制度の対象拡大が、労働法制などの法令順守に問題のある大企業による効率化最優先の動きを助長し、それを後押しすることになると指摘しました。
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「日本版AEO制度」には、「特例輸入者」「特定輸出者」にたいして輸出入時の通関手続きを簡素化する特例措置が設けられています。「特例輸入者」「特定輸出者」の条件として「貨物のセキュリティー(安全性)管理とコンプライアンス(法令順守)の体制が整備された事業者」などがあげられています。
関税定率法等改定案には、特例措置の対象となる事業者を通関業者に拡大することが盛り込まれていました。
佐々木氏は質疑で、キヤノンやトヨタ、リコーなど、大企業が名を連ねる特定輸出業者八十社(六日現在)のリストを提示。その上で、キヤノンの偽装請負やトヨタ自動車での過労死事件を取り上げ、企業のコンプライアンスのあり方についてただしました。
厚生労働省の石井淳子労災補償部長は、トヨタの過労死裁判での名古屋地裁の判決が、QC(品質管理)サークル活動を労働時間と認めたことについて「他の企業も含めルールが徹底されることが大切」と答弁。これをうけ佐々木氏は、判決が出てもQCサークル活動時間を労働時間と認めない会社が法令を順守していると言えるのかと指摘しました。
その上で、今回の改定案が、「広い意味でコンプライアンスに問題のある企業が、効率化を最優先させ、それを後押しする法改正だ。根本的に疑問がある」と強調しました。
同案は同日、採決され自民、公明、民主党などの賛成多数で可決しました。日本共産党は反対しました。
日本版AEO制度 AEOはAuthorized Economic Operatorの略 貨物のセキュリティー(安全性)管理とコンプライアンス(法令順守)の体制の整備など一定の条件を満たした事業者にたいする特例措置。貨物の到着前の輸入申告や、納税申告前の貨物引き取りなどができる簡易申告制度や、貨物がどこにあっても輸出申告ができ輸出許可を受けられる特定輸出申告制度などが含まれます。日本共産党は同制度が、財界、多国籍企業の要望にそったものであり、輸入品に対する検査体制を骨抜きにするものだと指摘しています。