2008年3月24日(月)「しんぶん赤旗」
NHK「日曜討論」
市田書記局長の発言
日本共産党の市田忠義書記局長は二十三日、NHK「日曜討論」に出席し、日銀総裁人事、道路特定財源の問題について、与野党幹事長と討論しました。
はじめに、日銀総裁人事について議論しました。市田氏は、政府の後任人事案が参院で否決されたことについて、次のように述べました。
日銀総裁人事
全党が基本的に賛成できる人物を
市田 われわれも総裁が空席であることはいいことだとは思っていません。
ただ、一九九七年に日銀法が改正され、国民の声が反映されるようにということで国会同意人事となりました。昨年の参院選挙で、与党が過半数を割ったということは、政府は重々承知のことです。衆参両方で同意を得なければ、総裁を決められないことは、わかっていたことです。
それを「空席になるのは反対した野党の責任」というのであれば、(政府が)提案した人事案を(野党が)すべて賛成しないとだめだという論理になり、同意人事にする意味はないわけです。
政府が基本的に全党が賛成できそうな人を選んで提起する必要があったと思います。
政府が日銀総裁の後任として、旧大蔵省、財務省の事務次官経験者である武藤敏郎氏や田波耕治氏を提案した問題では、自民党の伊吹文明幹事長が「事務次官経験者を二度続けて出したのは良かったのか、どうかは結果論としてはいろいろある」と述べました。一方、民主党の鳩山由紀夫幹事長は、「事務次官経験者は、内政中心で、国際金融にたけていない。そういう人を受け入れられない」と発言。市田氏は次のように述べました。
市田 日本共産党は、今度の人事が財金(財政と金融)分離に反するからとか、財務省、旧大蔵省出身者だからだめという立場ではありません。
日銀総裁の果たすべき役割は、日銀法の精神からいって国民経済の健全な発展に資することです。そういう役割にふさわしいかということを聴聞会でのやり取りや、これまでの業績を含めて検討しました。
(武藤氏の場合は)金融面でいうと、超低金利政策を副総裁として進めた人物です。超低金利政策で、国民の預貯金の利子が三百三十兆円奪われました。逆に、一九九一年から二〇〇五年までの同じ期間で、銀行は九十兆円、大企業は二百六十兆円の利益をあげました。
財政政策という点では(武藤氏は)財務次官として、小泉「構造改革」の推進者です。この間、いわゆる社会保障費の自然増を三千億円(〇二年度)、その後二千二百億円ずつカットし、国民生活を大変な困難に陥れました。
そういう人を日銀の総裁にするのは今の経済情勢を見て、良くない。しかも聴聞会でも、そういう政策は基本的に正しかったといったわけです。われわれが反対したのは、そういう理由で、官僚上がり、財務省上がりはだめだという立場では一切ありません。
道路特定財源
政府の修正案は一般財源化も、「中期計画」見直しもあいまい
次に、焦点である道路特定財源の問題をめぐって議論になりました。自民党の伊吹幹事長は、参院で国会審議が空転したことを批判。与党が年度末を目前に示した修正案(骨子)についての協議を開始するよう求め、市田氏は次のように発言しました。
市田 与党の修正案は、大問題です。税制関連の歳入法案については、年度内に成立させることが前提になっています。
道路特定財源についての総理の提起は「全額一般財源化」という方向でした。しかし、(与党の示した修正案には)「全額」という言葉が抜けています。
道路特定財源を「一般財源化すべき」という世論(調査)は四割だったのが、今は七割くらい。審議を進めていけばいくほど、一般財源化を求める世論が広がっています。
五十九兆円の総額先にありきの「道路中期計画」についても、ひどい代物だという世論が八、九割、賛成は8%くらいです。しかし、(与党の修正案には)「必要な道路整備は着実に進める」という当初なかった言葉が入っている。いわゆる「道路族」の意見が取り入れられたと報道もされています。
与党の修正案は、道路特定財源の一般財源化を全額やることも明確ではないし、「中期計画」についても、いったん白紙撤回して、一から見直すというものでもありません。はっきりしているのは、政府案の年度内成立ということだけです。
審議を通じて問題点を明らかに
国会審議のあり方が議論になり、市田氏は次のように主張しました。
市田 審議の問題については、衆院の二月二十九日の採決は、審議が不十分な中の強行採決だったと思います。それでも、われわれは、意見があるから議会に出ないという対応ではなく、本会議には出席し(反対討論をおこない)ました。それから参院段階で、二週間予算委員会が開かれませんでしたが、これは(民主党の対応も)良くなかったと思っています。(強行採決への)抗議の意思を示しつつ、内容について意見があるなら、予算委員会で、もっと早く議論すべきでした。
それから、財政金融委員会、総務委員会、国土交通委員会と、いわゆる道路問題と関係のある委員会で、大臣の所信表明もまだ聞けていません。やはり早く開いて、審議を通じて問題点を明らかにすることが、国民のみなさんに何が問題かということをわかってもらう上では非常に重要です。ただちに審議を開始すべきだと思っています。
ガソリンが安くなっても混乱おきない
さらに、ガソリン税の暫定税率など歳入関連法案の国会審議について議論になり、公明党の北側一雄幹事長は、「四月以降の国民生活の混乱や、地方財政の混乱を政治家がほっといていいのか」と発言。市田氏は、次のように述べました。
市田 原理的にいうと、暫定税率は三月末に期限が切れるということになっていました。延長することは決まっていません。それを未来永劫(えいごう)、続くものだという前提で予算を組み地方に押し付けてきたことが問題だと思います。
実際論では、暫定税率の廃止で税収が減るのは事実ですけれども、その分は国の責任で交付税という形でまかなえばいいわけです。
道路にしか使えない道路特定財源を一般財源化することで、地方の裁量権も増えます。そうすれば、ある県は福祉や医療に、いや、うちの県はもっと道路にということもあると思います。
では、すでに組んだ予算をどうするのか、という問題があります。
それは、あらかじめ暫定税率の延長ということを前提に予算を組ませている(政府の)問題はありますが、たとえば、補正予算もある。しかし、これは技術論の問題です。
ガソリンが安くなるということで、混乱は起こりません。五十九兆円の道路特定財源にもとづく道路づくりをつづけようと思えば、財源が減って問題になります。それをいったん白紙にもどせば、混乱はおこらないのです。
国会対応
国民生活の土台から議論し福田内閣を追及へ
最後に、今後の国会対応をめぐって議論になりました。民主党の鳩山幹事長は、「政府・与党が強行な政策とってきた場合は、問責決議案も含めて対応しなければいけない」と述べました。市田氏は次のように発言しました。
市田 道路の問題は非常に大事ですが、福田内閣の支持率が後退し、行き詰まっているのは、参院選挙の審判を受けた小泉「構造改革」路線を引き継ぎ、どんな問題でも軍事優先、アメリカいいなりということへの批判が高まっているためです。雇用もあれば、社会保障、農業の問題もあります。
私たちは、道路の問題でも、日銀総裁の問題でもきちんとした立場で対応しますが、問題は、それだけじゃないと思います。やはり国民生活の土台のところからの議論をどんどんやっていくべきだと思います。そういう立場で、福田内閣を追及していきたいと思います。