2008年3月27日(木)「しんぶん赤旗」
主張
新銀行東京
反対の世論を踏みにじった
破たんした「新銀行東京」に対して四百億円もの都民の血税をつぎ込む追加出資に、自民党と公明党が賛成しました。
都側の税金投入の理由説明に76%の都民が「納得できない」と答え(「読売」二十五日付)、93%の都民が石原慎太郎知事に責任が「ある」と答えています(「朝日」同日付)。
都民の声を踏みにじり、自らの責任を棚上げして税金を浪費する無法への抗議の声を、石原知事と自公に浴びせようではありませんか。
破たんのレール
石原知事は破たんの責任をもっぱら旧経営陣に押し付けていますが、そんなごまかしは通用しません。
新銀行東京は二〇〇三年の知事選の目玉として石原知事が打ち出し、トップダウンでつくったもので、「石原銀行」との異名を取っています。自民党、民主党、公明党の賛成で一千億円を出資して設立したものの、開業からたった三年で一千億円もの赤字を生み、出資金を事実上失いました。破たんの大もとは、知事が側近らにつくらせた運営指針(マスタープラン)にあります。
新銀行開業に向けて東京都がつくった「新銀行マスタープラン」(〇四年二月)は、短期間に過大な成果を要求する無謀な計画です。
石原知事は〇四年の都議会で胸を張ってマスタープランを紹介しています。「開業三年後には総資産一兆六千億、自己資本比率は邦銀トップクラス」をめざすと。
無謀な目標には無謀な融資とATM(現金自動預払機)設置の計画がセットになっています。多くの地域金融機関は、中小企業との密接で長期的な信用の積み上げを図る「リレーションシップ・バンク」を目指しています。しかしマスタープランは新銀行に、財務の数字で融資採算を判断するデータ頼みの銀行になるよう求めました。融資の主力にすえたのは、借り手に決算書を出させてからわずか三日で決裁する“手抜き融資”です。
こういうやり方で新規融資を膨らませることが、焦げ付きの危険を高めることは金融の常識です。
日本共産党の曽根はじめ議員が二十五日の都議会で明らかにした内部メモによると、マスタープランに無理があることをつかんだ旧経営陣が“手抜き融資”を減らし、計画を修正しようとしていたことが分かります。ところが都側は出資者としての権威を振りかざして、マスタープラン通りに戻すよう旧経営陣に迫り、「ご指摘に従う」と屈服させました。
このときの都側の代表が現在の新銀行の津島隆一代表執行役です。津島氏ら現経営陣が知事と都側を免罪し、旧経営陣にすべての責任をなすりつける報告をまとめたのは八百長以外の何物でもありません。マスタープランに従った無謀な融資の焦げ付きと、ATMの巨額の経費が大赤字の元凶になったことは明白です。
石原知事は辞職を
心配されるまじめな中小業者への融資は新たな制度融資で受け皿をつくれば救済できます。そのために石原知事が国や民間銀行に頭を下げて回るぐらいは、やって当然です。
都の再建計画では健全な融資先もばっさり切り捨て、さらに赤字を増やしかねない高リスクの事業を中心にします。そんな銀行は不要です。
一千億円の出資金に加えて新たに四百億円の税金をどぶに捨てる計画は撤回し、新銀行東京はすみやかに撤退させるしか道はありません。石原知事は自らの重大な責任を認め、いさぎよく辞職するよう求めます。