2008年4月3日(木)「しんぶん赤旗」

犯罪の「時効」はなぜ設けられたの?


 〈問い〉 ロス疑惑で、米国には殺人罪に「時効」がないと知りました。日本には「時効」があるようですが、「時効」はなぜ設けられたのですか? 戦前にはあったのですか? 戦後の憲法の精神にたって「時効」が設けられたのですか? 他の諸国の大勢はどうなのですか?(埼玉・一読者)

 〈答え〉 ご質問の時効は、「公訴時効」といって、犯罪後一定期間が経過することにより刑事裁判を求めて起訴することが許されなくなる制度です。犯罪が終わった時から、最高刑が死刑にあたる罪については25年、同じく無期懲役や無期禁固にあたる罪については15年というように、その罪の重さに応じて1年から25年の期間が定められています(刑事訴訟法250条)。なお、被疑者が海外に逃亡している期間は時効が進行しないなどの例外もあります。

 日本の公訴時効の制度は、明治の初めに日本の法制度の近代化の中でフランスの刑事法制から導入された制度です。戦後の新しい憲法の精神にたって導入されたものではありません。

 時効は犯罪者にとって“逃げ得”であり、どうしてこのような制度があるかという疑問があるのも当然で次のように考えられています。それは一般に、時の経過により刑罰による応報・威嚇(いかく)・改善の必要が弱まること、証拠が散逸し、事実の発見が困難になることなどが挙げられています。

 時効になった有名な事件としては、68年12月10日、東京・府中で起きた「3億円事件」や警察庁指定116号の朝日新聞阪神支局襲撃事件などがあります。

 公訴時効制度は各国で採用されていますが、殺人事件などではアメリカやイギリスでは公訴時効はありません。たとえば、全米50州には殺人犯に時効がなく、さらに重要犯罪にも時効を廃止した州、レイプ犯の時効を延長した州もあります。さらに、ドイツでは第2次大戦前のナチスの戦争犯罪の体験から謀殺罪については、フランスでは、集団虐殺など人道に対する罪については、それぞれ時効制度を排斥しています。

 日本でも、被害者の気持ちなど犯罪に対する国民の考え方の変化や凶悪犯の検挙率の低下などから、04年12月に刑事訴訟法が改正され、最高刑が死刑に当たる罪については15年、同じく無期の懲役または禁固に当たる罪については10年だったのが、最初に述べた期間に延長されました。(亮)

 〔2008・4・3(木)〕


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