2008年4月5日(土)「しんぶん赤旗」
ローマ法王庁 戦争に対する態度は?
〈問い〉 広島平和資料館に「ローマ法王平和アピール」の碑があるそうですが、ローマ法王庁は過去の戦争にどのような態度をとってきたのですか。それにEU(欧州連合)諸国はどのような見解を表明してきたのですか。(北海道・一読者)
〈答え〉 「ローマ法王平和アピール碑」は広島平和記念資料館東館ロビーにあります。石材によるこのモニュメントは、1981年2月25日に故ヨハネ・パウロ2世が来館し、「平和アピール」を発表したことを記念して建立されました(カトリックでは「教皇」と表しますが、このモニュメントも外務省文書も「法王」となっているので、ここでも「法王」とします)。「平和アピール」は「過去をふり返ることは、将来に対する責任を担うこと」とくり返しつつ、「紛争解決の手段としての戦争は、許されるべきではないというかたい決意をしようではありませんか。人類同胞に向って、軍備縮小とすべての核兵器の破棄とを約束しようではありませんか」と述べています。
こうしたローマ法王の態度の背景に、1962年から4会期におよぶ第2バチカン公会議がありました。この公会議は、5大陸から枢機卿はじめキリスト教関係者約3千人を結集した大規模なカトリックの会議で、教会論などさまざまなテーマが検討されました。その最後で、現代世界とのかかわりについての態度を表明した「現代世界憲章」が成立しました。78年10月に選出されたヨハネ・パウロ2世はこの憲章の具体化につとめ、世界をかけめぐって「空飛ぶ聖座」と呼ばれました。広島訪問もその一つでした。
法王庁に置かれた国際神学委員会は、ヨハネ・パウロ2世が世界中の人々に向けて問いかけてきたテーマ「過去の種々の過失」を研究し、キリスト教徒にとって節目となる2000年の3月に「記憶と和解」を発表しました。そこでは「ナチスのユダヤ人迫害は、反ユダヤ的な偏見、あるキリスト者たちの頭と心にぎっしりと詰まっていたあの偏見によって、より容易になりはしなかったでしょうか」と問い、法王の「過去の弱さを認めることは、誠実な行為、勇気ある行為なのです」という言葉を引用して結論としています。
神学委員会のまとめた「記憶と和解」を承認した当時の教理省長官が現法王ベネディクト16世で、ドイツ人の新法王は就任早々にアウシュビッツの門を歩いてくぐりました。
この姿に、平和の声がたかまるEU諸国で期待が広がったということです。(平)
〔2008・4・5(土)〕