2008年4月8日(火)「しんぶん赤旗」

ガソリン暫定税率 維持の署名

都道府県が推進

公文書でノルマも課す

呼びかけは民間団体


 「ガソリンの暫定税率の維持」を求める市民団体が呼びかけた署名が、三月初旬に政府に提出されました。しかし、署名集めの実態は、都道府県などの行政機関を動員した運動であることが七日までに明らかになりました。


 暫定税率維持や道路建設を求める署名をすすめているのは「必要な道路整備を進める女性の会」。同会は昨年十一月に結成、道路整備を推進する全国各地の二十六の女性団体が参加しています。暫定税率維持署名は五十七万人分集まり、三月七日に町村信孝官房長官に手渡されました。

「全高速」に要請

 入手した内部資料などによると「女性の会」は、全国の知事や議会議長らが会員の「全国高速道路建設協議会」(「全高速」)に署名集めを要請しています。全高速の担当者は「私どもも早く高速道路ネットワークを作りましょうという団体なので、知っている団体を対象に署名を紹介した」と認めています。

 「全高速」は、都道府県や政令市の東京事務所に署名用紙を送付していました。その際、「地元へ署名の依頼をしていただきたい」という都道府県側の依頼文が添付されました。

 署名用紙は、都道府県を経由して、市町村に配布されたのです。

 栃木県では一月十五日、県の担当課が協力を呼びかける公文書を各市町村長に出しました。文書には「各市町村につき五十名以上の署名をお願いします」とノルマを課しています。

 二十二市町が署名を職場内で回覧。足利市や高根沢町では勤務時間中に回覧していたといいます。その結果、「女性の会」は栃木県内で活動実績がないにもかかわらず、三週間ほどで約四千人分の署名が集まりました。

 文書を送付した栃木県交通政策課は「県の公文書をつけて回したのはまずかったが、強制したつもりはない。署名した人は(税率維持の)意思をお持ちだったと思う」としています。

 しかし、ある自治体の職員は「職場全体で取り組まなければいけないような雰囲気だった」と語っています。

 自治体によっては「(道路財源について)人それぞれの考え方や理由があるので応じなかった」(鹿沼市)、「はたして職員の理解が得られるのか、議論になり回覧しなかった」(小山市)ところもありました。

公務中署名集め

 北海道や福島県、青森県などでも自治体職場での署名集めが問題になっています。

 「女性の会」の代表が活動する福島県では、同会が直接、各市町村長あてに「町内会等に声をかけて」と依頼する文書を書き、署名活動を行っていました。

 国会の審議で、「女性の会」に参加する「熊本の道を語る女性の会」(熊本県)の会代表が経営する法人が、国交省から三年間で一億二千万円の業務を随意契約で受注していたことが明らかにされています。

 「女性の会」の代表は、「公の時間にやったのはいけなかったと思う。もっといいやり方があったかもしれない。行政ぐるみと言われることは否定したい。私たちは手弁当で運動している団体」としています。

図

政治的中立性に反する行為だ

 今回の署名について栃木県に監査請求をした市民オンブズパーソン栃木の秋元照夫事務局長の話 一般の栃木県民がどれだけ署名したか非常に疑問。ほとんどが県や市町村職員によるものではないか。公務員の政治的中立性に反する行為であり、地方公務員を動員した官製世論ではないか。



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