2008年4月12日(土)「しんぶん赤旗」

農業の多面的な役割とは?


 〈問い〉 3月7日発表の日本共産党の「農業再生プラン」で、「日本農業が果たしている多面的な役割は、年間の農業生産に匹敵する8兆2000億円にも相当します」とありますが「多面的な役割」とは具体的にどのようなことでしょうか。(新潟・一読者)

 〈答え〉 農業は、食料など農産物を生産するだけでなく、その生産活動を通じて、国土の保全、水資源の涵養(かんよう)、自然環境や美しい景観の形成、伝統文化や食文化の継承など、国民の暮らしや環境にとって欠かせない役割を果たしています。これらの役割を総称して、「多面的な役割」又は「多面的機能」と呼んでいます。

 多面的な役割は、各国の自然条件や農業生産の内容によっても違いますが、日本の場合には中山間地域や水田の果たす役割が非常に大きいのが特徴です。

 たとえば、中山間地域にある水田は、一般に河川の上流にあることから、大雨が降ったときに水量を調節するダムの役割を果たし、下流の都市を洪水からまもります。また、棚田は美しい景観や生態系の保存にとって欠かせない役割をもっています。

 農水省が、この役割の計量評価を日本学術会議に諮問し、2001年に公表した試算による評価額は、総計で8兆2226億円でした。

 その内訳は、洪水防止機能(治山ダムの建設単価を用いて評価)3兆4988億円、水資源の涵養機能(同)、1兆5170億円、土壌浸食(流出)防止機能(同)3318億円、土砂崩壊防止機能4782億円(直接評価)、有機性廃棄物処理機能(最終処理場の建設コストにより評価)123億円、気候緩和機能(水田による夏季の気温低下能力などを冷房電力料金で評価)87億円、保健休養・安らぎ機能(農村地域への旅行者等の旅行費用により評価)2兆3758億円です。

 これにたいし、07年の農業総産出額は8兆2900億円と評価額の合計とほぼ同額でした。

 また、水質汚濁など環境面へのマイナス面を考慮して、農業工学研究所が行った試算によると、森林農地の洪水を防ぐ機能、地球温暖化抑制機能、水田の水質浄化機能などによる便益が47兆6260億円になり、一方、森林農地が環境にもたらす負荷は10兆590億円で、差し引き農林業の果たしている多面的な役割の評価額(便益)は37兆5670億円になっています。

 このように国内農業の再生は、国土・環境の維持・増進という点からも非常に重要な課題なのです。(有)

 〔2008・4・12(土)〕


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