2008年4月13日(日)「しんぶん赤旗」
主張
牛丼「すき家」
残業代の不払いを許さない
大手牛丼チェーン「すき家」で働く労働者が、時間外の割増賃金などの不払いを是正するよう求めて八日、「すき家」を経営するゼンショー(本社東京都港区)の小川賢太郎社長を、仙台労働基準監督署に刑事告訴しました。刑事告訴は異例です。
告訴したのは、仙台市の仙台泉店で働く福岡淳子さんら三人のアルバイトで、いずれも首都圏青年ユニオンの組合員です。
三人は二〇〇七年十一月には、同労基署に不払いの是正申告をおこなっていますが、ゼンショーは是正勧告を拒否しています。
あまりに悪質な企業経営
外食大手のゼンショーは、「フード業世界一」をスローガンに掲げて急成長しています。〇一年に東証一部に上場し、〇七年三月期には売上高が八百三十九億円に及びます。
牛丼「すき家」は、北海道から沖縄まで全国展開しており、店舗数は千店近くあります。正社員はわずか七百人ほどで、パート・アルバイトがその九倍を超える約六千七百人にのぼります。
企業経営者が法律にも明記された規定の賃金を払うのは当たり前です。「すき家」のやり方は、あまりにも悪質です。
労働基準法は第三七条で、使用者が労働時間を延長し、休日に労働させた場合には「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下」の割増賃金を支払わなければならないと定めています。これに違反した場合は「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」が科せられます。
ところが福岡さんの〇五年十二月―〇六年九月の割増賃金約十四万四千円と、他の男女二人の〇六年九月分の割増賃金計二万九千円が支払われていません。福岡さんの場合は、「店長」として他店の応援業務に駆り出された〇六年二―五月の不払い労働百七十三時間、約十四万二千円も支払われていません。三人への割増賃金の不払い総額は三十一万円を超えています。
ゼンショーの言い分は、「すき家」のアルバイトは労働者ではない、個人請負だから残業代そのものが発生しない―というものです。〇八年二月には仙台労基署が、割増賃金の不払いという違法行為を是正するよう勧告しましたが、ゼンショーはこれにも従おうとしません。憲法で保障された労働組合との団体交渉も、拒否しつづけています。
十日の参院厚生労働委員会で日本共産党の小池晃議員がこの問題を取り上げ、労基法違反の悪質な企業に対して厳しく対処するよう求めました。厚労省の労働基準局長は「是正しない悪質な事例には司法処分を含めて厳しく対処していく」と答えるとともに、「すき家」の労働者は個人請負という主張が成り立たないことを認めています。
違法企業に厳しい対処を
「新しいアルバイトを探すなら、すき家で決まり♪」と募集しながら、ただ働きを強いる「すき家」のやり方を許すわけにはいきません。
日雇い派遣や登録型派遣など、労働者を「モノ扱い」する非人間的な働かせ方が横行しています。「すき家」のやり方は当然払うべき残業代・割増賃金を払わず、労基署が勧告しても勝手な理屈をつけて開き直るなど、あまりにもひどすぎます。
ただ働きや長時間労働はいま、大きな社会的批判を浴びています。
労基署など監督機関は、「すき家」をはじめ悪質企業に対して、関係法令にもとづいて厳正に対処すべきです。
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