2008年4月15日(火)「しんぶん赤旗」
主張
道路特定財源
10年延長は根本から矛盾する
町村信孝官房長官は十四日の記者会見で、ガソリン税などの「暫定税率」を維持する税制法案の成立は政府・与党方針の前提であり、「絶対に譲れない」とのべました。
道路特定財源をめぐる政府と自民党・公明党の合意は、与野党協議の前提として、道路特定財源と暫定税率を十年間延長する法案を「一日も早く成立させる」としています。
この前提条件は、同時に政府・与党合意が掲げた二〇〇九年度からの一般財源化の方針とは、誰が見ても根本から矛盾しています。
浪費計画への固執
来年度の一般財源化と十年で五十九兆円の道路中期計画との矛盾を問われた冬柴鉄三国交相は、「非常に難しい」とのべつつ、次のように答えました。「どうであろうと必要な道路は造らなければならない」
一般財源化しても、医療や教育、農業など暮らしに密接な分野の財源を確保しながら、本当に必要な道路を整備するのは当然です。しかし、中期計画の中心はバブル期に立てた高速道路計画であり、候補路線には六本の海峡横断道路を造る途方もない浪費構想まで含まれています。
中期計画は「医師不足から救急医療施設がここ五年間で約一割減少しており、救急医療施設へのアクセスを確保する幹線道路ネットワークの整備は急務」と説明しています。救急病院の不足は深刻ですが、必要なのは患者を遠くの病院に運ぶ幹線道路ではなく、住民の身近に救急病院を整備・建設することです。
政府・与党の合意は、無駄遣いと批判が強い道路中期計画の期間を「十年」から「五年」に短縮して、あくまで推進することを盛り込んでいます。「総額先にありき」の浪費計画は、期間を短縮しても浪費の枠組みに変わりはありません。こんな計画は白紙に戻すべきです。
額賀福志郎財務相は今月初めの記者会見で、道路整備の必要性、環境や財政赤字の問題をあげて暫定税率の維持を訴えました。「一時の利益というよりも、五年や十年、二十年先の日本の姿を考えていかなければならない」と語っています。
「二十年先の日本」などと偉そうなことを説く資格は自公政府にはありません。暫定税率は三十四年前に道路の五カ年計画を進める財源として、二年の期限を切った増税として始まりました。「暫定」にもかかわらず、政府は新たな道路計画のたびに延長し、三回も税率を引き上げています。与党の数の力で場当たり的に繰り返した延長・増税は、浪費的な道路建設を加速し、国際的にも突出した公共事業優先の体制をつくり、財政をゆがませ圧迫してきたのです。
暫定税率は「暫定」と国民に偽って三十年以上も続けてきた、道路建設のための増税です。需要を過大に見積もり、緑をつぶして舗装してきた環境破壊税にほかなりません。環境対策の意味でも特定財源・暫定税率は廃止すべきです。その上で、温暖化ガスの排出量を考慮した環境税を導入し、大口排出者の大企業に相応の負担を求めることが重要です。
「聖域」に終止符を
国民の世論と国会での論戦が、無駄な道路を造り続ける「自動装置」として半世紀にわたって自民党政治が温存してきた「聖域」に、大きな亀裂を走らせています。今は「聖域」を終わらせる大事な局面です。
特定財源と暫定税率は期限が切れ、失効しています。これを復活させて十年も延長する法案は廃案にし、道路中期計画を白紙撤回するよう迫っていこうではありませんか。
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