2008年4月15日(火)「しんぶん赤旗」
介護・福祉の職場
過半数“仕事やめたい”
医労連調査
労基法違反や低賃金まん延
日本医労連(日本医療労働組合連合会)の田中千恵子委員長らが14日、都内で会見し、「介護・福祉労働者の労働実態調査」結果(中間報告)を発表しました。
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介護・福祉労働者の半分以上が仕事を辞めたいと思ったことがあると答えるなど深刻な実態が浮き彫りになりました。
四十一都道府県の六千八百十八人から回答が寄せられました。同労組が、賃金や時間外労働などの労働実態のほか、健康状態や医療行為の実施など五十四項目におよび調査したのは初めてです。
4割が月20万円未満
正職員の所定内賃金は、二十万円未満が四割を超えました(グラフ参照)。介護福祉士平均は月十九万四千六百円、ヘルパー(一―三級)平均十七万五千二百円でした。
パートの時給は、八百―九百円未満が29・4%と最も多く、次いで九百―千円未満21・1%、千―千百円未満15・2%の順番です。
時間外労働をした人のうち約三分の二がサービス残業をしていたほか、見回り程度で通常業務でないはずの「宿直業務」で、八割がほぼ通常業務に就いているなど、各職場で労働基準法違反がまん延していました。
「健康でない」51%超
健康状態については、不安があったり病気がちなど「健康でない」と答えた人が半数を超え(51・2%)ました。疲れ具合も、翌日に残ったり休日を経ても回復しない人が61・3%にのぼり、半数を超える人が腰痛や肩こりを訴えています。
妊娠経験のある女性のうち七割が、ひどいつわりや切迫流産、貧血などの異常を訴えました。
人手不足や忙しさから、現場では転倒や転落などの事故が起きています。「利用者に十分なサービスが提供できている」と答えた人は、わずか4・8%でした。
「仕事を辞めたい」と思ったことがある人は55%。「賃金が安い」「忙しすぎる」などが主な理由です。(グラフ参照)
回答者の八割が女性で、年齢は三十歳未満、三十―四十歳未満、四十―五十歳未満、五十歳以上がほぼ四分の一ずつ。正職員が約三分の二(65・5%)のほか、フルタイムパートが17・3%、短時間パートが10・1%。職場の約八割が施設系で、約二割が訪問系。職種別では介護福祉士30%、ヘルパー22・2%、看護職16・7%、ケアマネジャー7%でした。
待遇の改善が不可欠
記者会見した都内老健施設の介護福祉士の男性(35)の基本給は二十五万円、夜勤手当など加えても約三十万円だと話しました。「日勤では一フロアの入所者三十四人を二人の職員で、夜勤は一人でみており、コールや転倒などに対応できない。いまの介護報酬では、人を増やしたくても増やせない状態です」
岡野孝信執行委員は、「労働基準法違反が常態化している職場の実態、介護福祉労働者自身が健康を害している実態が明らかになった。改善のためには賃金や人員体制などの労働条件の改善とともに、国庫負担と介護報酬の引き上げが不可欠だ」と強調しました。
田中委員長は「来年度の介護報酬改定を前に、介護福祉労働者の実態を世論化し、改善の運動と組織化をすすめていきたい」とのべ、介護保険制度の改善と労働条件の引き上げをあわせて取り組んでいきたいと語りました。
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