2008年4月19日(土)「しんぶん赤旗」
イラク・アフガン帰還米兵
30万人にPTSD
米研究所推計
【ワシントン=鎌塚由美】米国防総省に近いシンクタンク、ランド研究所は十七日、イラク、アフガニスタン戦争の帰還兵約三十万人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っていると推計する報告書を発表しました。
「戦争の隠れた傷」と題する五百ページにわたる報告は、民間研究所が帰還兵の精神疾患を扱った「大規模で初めての調査」(同研究所)だといいます。これらの推計は国防総省などの報告をはるかに上回ります。
報告はPTSDのほか、イラク、アフガンでの負傷の特徴ともなっている「トラウマ性脳障害」(TBI)を負っている可能性のある帰還兵の数も推定し、三十二万人と指摘しました。TBIは、自動車爆弾などの簡易爆発物によるものです。
調査は、千九百六十五人の帰還兵を対象に実施されました。二〇〇一年十月以来、アフガニスタン、イラクに派兵された米兵は約百六十万人にのぼることから、これらの数字を推計したもの。
調査に携わったテニリアン研究員は、帰還兵の精神疾患には適切な治療が必要であるにもかかわらず、「残念ながら彼らが必要とする高品質の治療を受けるには多くの障壁が存在する」と指摘。治療体制の不備やキャリアに影響するとの懸念から兵士が治療を求めない事例を指摘しました。
報告は「治療のギャップ」として、PTSDやうつ病の症状を示す帰還兵が過去一年間に治療の助けを求めたのは53%にすぎないと紹介。治療を受けた半数近くが「かろうじて最小限の適切な処置を受けている」状態だと述べています。
さらにTBIの可能性のある帰還兵では、57%が脳外科医や精神科医の診察を受けていない状態だといいます。テニリアン研究員は「これら病気の帰還兵たちの治療には、一時しのぎの対処ではなく制度的変化が求められる」と指摘しました。
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