2008年4月20日(日)「しんぶん赤旗」
後期高齢者医療制度
診療所つぶしあいに
医師会に広がる危機感
地方医師会に広がる後期高齢者医療制度への反発―。本紙が行った全都道府県医師会への電話調査(記事)では、同制度に対する厳しい批判の声が聞かれました。
いち早く「断固反対」を表明した茨城県医師会の事務局担当者は三月二十二日付の会長声明を引用し、「後期高齢者医療は高齢者に大きな負担をもたらし、医療を制限する萎縮医療そのものだ」と批判しました。
広島県医師会は制度廃止を求める理事会声明を決議し、九日付で厚生労働相、県知事らに送付。声明では、制度の問題点を「年金から保険料が天引きされる」「保険料を滞納したら保険証を取り上げる」「患者の自由な医療機関の受診が制限される」としています。
宮崎県医師会はホームページに文書(十四日付)を掲載し、「高齢者の心身特性を無視し、高齢者を差別し、過度の負担を高齢者に押しつけ、限られた年金から保険料を天引きし、保険料を滞納した場合には保険給付を停止する等、医療費削減のみを目的とした弱者切捨ての制度です」と厳しく批判しています。
後期高齢者診療料の算定については二十府県医師会が「慎重に」「反対」「撤廃を」など批判的な態度を表明しました。(表)
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山形県医師会は「七十五歳以上の高齢者といえど、十分に質の高い医療を提供したい」として、会員に算定の自粛を呼びかけています。
算定は慎重にと会員に通知している、ある医師会の事務局担当者は「一患者に一医療機関というのが基本的な考え方なので、患者の奪い合いが起こり、このままでは診療所がつぶしあってしまう」と危機感を語ります。
群馬県医師会の須藤英仁理事は「うちはまだ態度をはっきり決めていない」とした上で、「制度に乗って進めることを躊躇(ちゅうちょ)している。患者が専門的な診療を受けづらくなるのではと懸念している」と話します。
態度を表明していない医師会でも、「社会問題化しているのを受け、緊急理事会を開いて対応を協議する」(島根県)、「制度には問題がある」(山口県)など制度を批判する動きが広がっています。
ある医師会の事務局は「会員の先生方から、診療料に反対するべきだというご意見をうかがっている。継続的に検討している」と話しました。
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