2008年4月25日(金)「しんぶん赤旗」
食の異変
米国 学校給食ピンチ
食材高騰 貧困層襲う
独立採算 値上げに直面
世界的な食料の高騰は、米国の食卓も直撃しています。子どもたちが楽しみにする学校給食にも、食品価格の高騰が暗い影を落としています。
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ワシントン近郊、メリーランド州モンゴメリー郡の学校給食を長年担当してきた食品栄養サービス局のキャシー・ラゾール局長(51)は今、牛乳の値上がりに頭を悩ませています。
給食メニューの一品として必須の牛乳は、予想を大きく超える23%の値上がり。すでに二十六万ドル(約二千六百万円)の予算オーバーになっています。
「この赤字をどこかで補わなくてはなりません」。独立採算で運営される学校給食部門にとっては、値上げを検討しなければならない可能性が生まれています。
命綱とも■
食品栄養サービス局は、郡内の約二百の公立学校(小、中・高校で生徒数十三万八千人)の食堂に、併設する給食センターで調理した給食を運んでいます。
給食(朝と昼)を利用するのは、中・高校生の24%、小学生では44%に上ります。弁当を持参し、サラダなどの付け合わせや飲み物を食堂で購入する生徒もいます。給食セットは現在、一食二・五ドル(約二百五十円、小学校は二・二五ドル)となっています。
学校給食に携わって二十一年となるラゾール局長にとっても現在の事態は「かつてない」と言います。価格高騰が「広範囲の食品におよび、さらに長期化が予測されている」からです。
米メディアは、給食の値上げを発表する学校が全米各地で相次いでいると伝えています。
学校給食が教育で果たす役割について、「子どもたちが学習するための環境を整えるため」だとラゾール氏。「空腹では子どもたちは学べません」。貧困問題を抱える米国にとっては、学校給食が子どもたちの命綱ともなっています。
祈るしか■
同郡でも、生徒のなかには「学校で食べる朝と昼の給食が、食事のすべてとなっている生徒もいる」といいます。フードスタンプ(生活保護者に支給される食料切符)を受給する家庭には、無料・減額給食制度(州・連邦政府が資金援助)が用意されています。
しかし、給食の値上げとなれば、この制度に該当しない低所得家庭の生徒の間で「給食の買い控えや、食事の栄養価の低下が懸念される」とラゾール氏は顔を曇らせます。
子どもが多い家庭の親にとっては、すでに「給食費が高い」との声が上がっているといいます。ラゾール氏は、価格高騰が少しでも緩和されることを「祈るしかない」状況だと語りました。(ワシントン=鎌塚由美 写真も)
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