2008年4月27日(日)「しんぶん赤旗」
主張
暫定税率
大増税の再議決に道理なし
政府と自公両党は、ガソリン税の暫定税率を復活させる法案を、衆院の「再議決」によって三十日にも成立させる方針です。
暫定税率をめぐる状況は三月までとは大きく変化しています。
ひとつは、ガソリン税などをもっぱら道路につぎ込む特定財源化を定めた特例法と、暫定税率を定めた租税特別措置法の期限が三月末に切れ、失効したことです。これにより、ガソリン税などは本来の一般財源に戻り、税率も下がりました。
もうひとつは、世論に押された福田康夫首相が、一年後には道路特定財源を廃止して一般財源にすると三月末に表明したことです。
首相の約束と根本矛盾
暫定税率は、高速道路を中心にした五十九兆円の道路中期計画の財源確保のために、道路特定財源を増やす増税措置です。その道路特定財源を一年後にやめるという首相の約束と、暫定税率を向こう十年も続ける法案は根本的に矛盾しています。
期限切れ失効によって、暫定税率の問題は「従来の税率の延長」ではなく、「下がったガソリン税の再増税」の問題に一変しました。
福田内閣と自民党、公明党が再議決で強行しようとしている法案は、本則で一リットル当たり二十四・三円のガソリン税を、四十八・六円に倍加する大増税にほかなりません。しかも増税の「暫定」期間を、これまでの五年から一気に二倍の十年に引き延ばすという、火事場泥棒のような厚かましい法案です。
くらしは、ますます窮屈になっています。所得の低迷と医療費や税金の負担増に苦しむ庶民の家計を、食料品をはじめとする生活必需品の相次ぐ値上げが襲っています。
福田首相は十二日の「桜を見る会」のあいさつで、物価が上がるのは「しょうがない」とのべ、「耐えて工夫して切り抜けるのが大事だ」と説きました。冬柴鉄三国交相も衆院の国土交通委員会で、「生活をどうするかは、それぞれが工夫していかなければならない」と答弁しています。
市場の混乱が国民生活を直撃しているときこそ政府の出番であるにもかかわらず、その責任に対する自覚がみじんも感じられない言葉です。まして福田内閣は、七十五歳以上に差別医療を押し付ける後期高齢者医療制度の実施で高齢者を不安の渦に陥れた上、ガソリン税の増税で生活に大打撃を与えようとしています。その張本人の福田首相や冬柴大臣が生活のやりくりを説くのは、強盗に入って防犯を説く説教強盗のようなものです。
「ユーザー」の声聞け
世論は明確です。「朝日」「読売」「毎日」の最近の世論調査では、再議決による暫定税率の復活に反対の人が六割を超え、賛成の二、三割を大きく上回っています。
政府・与党は、道路特定財源の見直しには「ユーザー、納税者の理解を得なければならない」(額賀福志郎財務相)と繰り返し強調してきました。それなら、暫定税率に対する「ユーザー、納税者」の意見を聞くべきです。個人ドライバーと家族など千七百万人が加入しているJAF(日本自動車連盟)は、二〇〇八年度の「税制改正に関する要望」で次のようにのべています。
「税収の全(すべ)てを道路整備に充てないならば、暫定税率を廃止し、減税すべきです」
少なくとも一年後に道路特定財源を廃止すると言うなら、暫定税率を復活、十年延長する「再議決」に道理はありません。くらしを痛めつける大増税はやめるよう求めます。
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