2008年4月28日(月)「しんぶん赤旗」
主張
海外派兵恒久法
自動参戦めざす策動をやめよ
自衛隊をいつでも海外に派兵できる海外派兵恒久法をつくろうという動きがつよまっています。
福田康夫首相が三月下旬に恒久法制定を「早くしたほうがいい」とのべたのをうけて、自民党は四月中旬、恒久法制定をめざすプロジェクトチームを立ち上げました。自民、民主、公明の「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」も総会を開き、集団的自衛権論議などとともに、「恒久法制定が急務」として動きだしています。事態は重大な段階を迎えています。
アメリカの要請
自民党の恒久化法制定プロジェクトチームの座長も兼ねる山崎拓自民党外交調査会長は二十三日、今通常国会の会期末(六月十五日)までに恒久法の要綱をまとめ、夏に法案化、秋の臨時国会で成立というスケジュールを示しました。イラク派兵は「憲法九条一項に違反している活動を含んでいる」と認定した名古屋高裁判決を足げにするような動きを許すわけにはいきません。
恒久法は、海外派兵のたびに特別措置法案をつくり、国会の承認を得るやり方をやめ、制定後は政府の判断でいつでもどこにでも派兵できるようにするものです。制定をめざすのは、参議院で悪法が簡単に通る状況ではなくなっているからでもあります。
テロ特措法では延長法の成立が遅れ、自衛隊がインド洋から撤退し、アメリカの不信を買う事態にもなりました。政府・自民党などは、恒久法の制定で、国会のチェックもなしに海外派兵ができる状況をつくろうとしているのです。
恒久法はアメリカの要求にもとづくものです。アーミテージ元国務副長官などアメリカの超党派アジア研究グループは昨年、恒久法議論を「励まされる動き」とのべ、米軍が必要とするとき「短い予告期間で部隊を配備」するよう求めています。
三月に訪米した深谷隆司衆院テロ対策特別委員長は、米政府に今年秋にも恒久法を制定すると約束しました。あまりに異常な動きです。
自民党の恒久法議論の方向は重大です。戦闘に発展しかねない治安維持や警護活動などを含んでいます。政府が「憲法違反の議論がでてくる」といってきたアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)への参加も検討対象にしています。
しかも政府は、外国軍を受け入れている政権が外国軍の活動を治安維持活動として認めるのであれば、無差別爆撃も治安活動となり、国連憲章が禁止する武力行使にあたらないとの新見解を示しています。恒久法は、憲法の禁止する武力行使にふみこむ危険をはらんでいます。
政府は従来、自衛隊は「日本防衛のための必要最小限の実力部隊」と説明してきました。イラクへの派兵であろうと、どんな形をとろうと自衛隊の海外派兵は政府見解にてらしても憲法違反です。自動参戦に道を開く恒久法が憲法違反であるのは明白です。
平和の流れを大きく
恒久法の策定作業は、それ自体が憲法違反であり、やめるべきです。
いま国際社会では、紛争がおきても外交的・平和的に解決しようという動きが大勢です。イラクから軍隊を撤退させる国が相次ぐのもそのあらわれです。
派兵恒久法は世界の平和の流れに逆行します。平和を求める諸国の信頼を失い、世界の孤児になるような愚行を重ねるべきではありません。