2008年4月30日(水)「しんぶん赤旗」
EUと日本の食品安全委員会の違いは?
〈問い〉日本共産党の予算案組み替え案に、EU(欧州連合)の食品安全委員会のように日本の食品安全委員会の改革を求める、という指摘がありますが、両者のちがいをもう少しくわしく知りたいのですが。(神奈川・一読者)
〈答え〉日本の食品安全委員会は、食品安全基本法に基づき、2003年7月に内閣府の下に食品安全のリスク評価を行う専門機関として設置されました。食品安全委員会は、7人の委員(常勤4人、非常勤3人)で構成されていますが、毒性学や微生物学等の専門家で消費者代表は一人も入っていません。
食品安全委員会の下には、プリオン専門調査会等16の専門調査会が置かれ、そこで実質的なリスク評価が行われています。
この食品安全委員会の設置を決めた食品安全基本法の法案審議の際は、消費者団体や日本弁護士連合会等から、「消費者問題に高い見識を有する者」「委員の選任に当たっては、消費者団体からの意見も尊重すること」「消費者代表や関係団体の監視権限」「食品安全委員会への消費者の意見を反映する仕組みを定めること」等が要望されましたが、まったく反映されることはありませんでした。
EUの欧州食品安全機関(EFSA)では、14人のメンバー(うち4人は消費者問題及び産業問題に知見を有するものとするとされ、消費者代表も含まれる)による執行理事会とその下に置かれるリスク評価を行う科学パネルがあり、単にリスク評価を行うだけでない権限が付与されています。また、フランスの食品衛生安全庁(AFSSA)も、リスク評価は、外部の専門家で構成される専門委員会が行い、理事会は、消費者団体も含まれる25人で構成し、「政策立案や規制の実施について勧告、助言」する権限を与えられています。イギリスの食品基準庁もリスク評価は、委託する外部の専門家が行い、人畜共通感染症に関しては、食品基準庁が農場から食卓までの全体戦略を策定する権限を与えられています。
このように諸外国の事例と比較しても日本の食品安全委員会は、消費者団体の参加もないリスク評価だけを行う極めて特異な組織といえます。このような組織で日本の食品の安全性は確保できるのでしょうか。確かにリスク評価は行われるでしょうが、食料自給率39%の食料輸入大国日本において食品の安全性を確保するために不可欠な水際の輸入食品の検査体制を強化する問題や食品の安全性の確保の、裏づけとなる国の予算の問題は、この食品安全委員会ではまったく討議対象にもならないのです。
このような食品安全委員会を改革し、消費者の立場に立ったものにしようというのが、予算案組み替え提案で打ち出された内容でした。(小)
〔2008・4・30(水)〕