2008年5月1日(木)「しんぶん赤旗」
いい看護がしたい
50人正職員化 労使が一致
高知「精華園」
「いい看護をするために職員全員を正職員に」―高知市にある精神科医療の専門病院「医療法人精華園 海辺の杜(もり)ホスピタル」(四百三十五床、職員二百六十人)で、契約職員の看護助手のうち希望者の全員、五十人が四月から正職員になりました。非正規雇用が広がる医療職場で注目を集めています。「雇用を安定させて、いい看護を」と求めてきた高知県医労連・精華園労組のたたかいがありました。
「毎年契約更新されない不安から解放され、ホッとした。定年まで働けると思うとうれしくて」
勤続八年の女性(50)は喜びをかみしめます。男性(59)も「まさか正社員になれるとは思わなかった。あきらめず声をあげることが大切ですね」。一年の女性(22)も「いつ辞めてもいいと思ってたけど、正社員になれて働き続けたいと思えてきた。両親も喜んでいます」。
浦戸湾に面した同病院は、戦前から患者をみてきた歴史ある病院です。看護助手は三交代で看護師と一緒に看護を担っています。しかし、十年働いても日給六千四百円。賃金も一時金も正職員との差は大きく、三年とたたず多数が辞める状態でした。正職員になると日給から月給になり、雇用と収入が安定します。
転機は二〇〇四年。看護助手らを派遣会社に移籍させる計画に対し、看護助手四十二人はじめ多数の契約職員が組合に加入し、撤回されました。組合はその後も、よりよい看護と病院の将来のために不安定雇用をなくすよう求め、病院側も経営陣が変わるなかで正職員化を決断しました。
下司孝管理部長は「病院には人材こそ財産です。とりわけ精神科医療では入院日数も長く、安定したケアが欠かせない。不安定な雇用をなくし、待遇をよくして生きいきと働いてもらうことが、患者さんや病院のためにもなる」と強調します。
「医療法人精華園 海辺の杜(もり)ホスピタル」で、医労連・精華園労組が契約職員の待遇改善に取り組むなかで労働組合にも変化が―。
〇五年の一時金交渉。正社員が「私たちはいいから看護助手を上げてほしい」と主張し、契約職員の一時金を引き上げさせました。これまで“看護師のための組合”との思いがあった看護助手の意識が変わりました。
看護助手の山下実紗書記長は、「組合は、だれかが何かをしてくれるところではなく、自分たちが何かをするところなんだと思うようになった。これが正職員化の力になった」と振り返ります。
医療・福祉職場では待遇の悪さなどで半数の職員が退職を考えるともいわれ、同病院の取り組みが注目されます。
女性(54)は「患者さんの支えになり、逆に励まされることもあるやりがいある仕事です。誇り持って働き続ける一歩にしたい」。男性(28)も「みんなが正職員になり、力を合わせてよい職場をつくっていきたい」―。
山下書記長は語ります。「正職員になっても賃金は自立して結婚していくには及ばない水準であり、今後の課題です。安心して働き、いい看護ができる職場をめざして、みんなが力を合わせてすすんでいきたい」
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