2008年5月6日(火)「しんぶん赤旗」
年金施設98売却
45件(判明分)は営利企業取得
ホテルや旅館、マンションに
07年度
国民が納めた年金や健康保険の保険料をもとに全国各地に建設された「サンピア」「ペアーレ」などの「年金福祉施設」が、二〇〇七年度に計九十八施設も売却されていたことが、わかりました。うち、判明しているだけで、半数近い四十五施設は、建設会社やマンション業者、ホテルチェーンなど営利企業が取得しており、国民の貴重な財産がもうけの対象となっていることが改めて浮き彫りになりました。
年金福祉施設の売却を一般競争入札ですすめているのは、厚生労働省所管の独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」。同機構は、入札結果をホームページで公表していますが、落札者名、用途・目的については、落札者の同意が得られたもののみ掲載しています。
このため、〇七年度に売却された九十八施設のうち、落札者の同意が得られず、「法人」とだけ表示されたのが四分の一以上の二十六施設もあります。公表されているなかでは、医療法人、財団法人各六施設、学校法人、社会福祉法人各四施設などのほか、四十五施設が営利企業でした。
このうち、これまで「名古屋健康づくりセンター」「ハートピア松江」などを取得してきた穴吹工務店(高松市)は、「共同住宅の新築工事・販売」を目的に、新たに「とっとり社会保険センター」を三億三千百万円で落札していました。
本田技研工業は、「おおさか社会保険センター堺」を九億三千万円で落札、自動車販売店舗にするとしています。
昨年三月、大分県の「国民年金保養センターくにさき望海苑」を一億六千百万円で落札したのは、低価格食品の「業務スーパー」を全国展開する神戸物産(兵庫県稲美町)。〇七年度も、千葉県の「国民年金保養センターそとぼう」(二億二千万円)、北海道の「しらおい厚生年金保養ホーム」(二億七千三百万円)、長崎県の「国民年金保養センターくちのつ」(八千五百万円)と立て続けに取得、ホテル事業に参入しています。
三菱電機グループの福祉関連事業を担当している三菱電機ライフサービスの100%子会社「メルコリゾートサービス」は、群馬県・草津温泉の「ホールサムインしゃくなげ」を四千二百万円で落札しました。
スイミングスクールやスポーツクラブを中部地方で展開している「コパン」(岐阜県多治見市)が、「ぎふ社会保険センター」(一億八千二百万円)、「ペアーレ宇治」(三億七千万円)を取得、店舗数を増やしています。
愛知県を中心に六旅館を経営していた「海栄館」は、「ハートピア富山つるぎ」(三億円)、「ウェルサンピア伊勢」(五億七千五百万円)を取得。それぞれ「つるぎ恋月」「千の杜」として、今年二月にオープンしました。
このほか、テーマパーク型ショッピングスクール、オークション会場、分譲マンションなどに転用する例がみられます。
同機構によると、九十八施設の売却額は計四百五十九億七千七百万円。売却額は、政府から機構に託された当時の時価を四十一億二千八百万円上回ったものの、国の台帳価格ベースの千二百八十四億円の三分の一程度にとどまっています。
年金・健康保険福祉施設整理機構 二〇〇五年十月に発足した独立行政法人。社会保険庁による年金流用や巨大施設への年金積立金投入などへの批判が高まるなか、自民・公明両党は同年六月、問題の原因究明をすることもなく、年金・健康保険福祉施設整理機構法を成立させ、五年間で全国の年金福祉施設三百二施設を売却する計画です。〇七年度までに計百六十四施設が売却されました。
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